プロに訊け
SHOBI ゆかりのプレイヤーや作曲家にインタビュー形式で いろいろ伺いました。気になるアノ話が聞けるかも!
作曲家 鈴木英史氏
人気作曲家 鈴木英史氏に訊く。
―― 鈴木英史先生はオリジナル作品、アレンジ作品ともにたくさん書かれていますが、 いずれも演奏し易くかつすばらしい曲が多いです。
ありがとうございます。全国の中学、高校の現場で学ばせてもらった結果ですね。作曲にあたってある意味一番重要と思われる、この音は楽器の構造上鳴りにくいとか、音程が合いづらいとか、更にパート譜の書き方含めてね。私の場合、大学ではなく"現場"で教えられたものなんですよ。吹奏楽が盛んなSHOBI ではそういう事もしっかり勉強できるし、音を出せる機会も多くて、ほんとうに素晴らしいと思います。
―― 作・編曲活動だけでなく、各方面で指揮活動もされていらっしゃると思いますが、 やはりご自身で書かれたスコアの指揮をされることが多いですよね。 実際に響く音は、やはりイメージ通りの音なんでしょうか。
もちろん。自分で書いたスコアですから、むしろイメージどおりじゃないと困りますよね(笑)。 若い頃は思ってるよりずっとよい音が鳴っていたりしましたが、今はイメージ通りです。 ただ自分が指揮した演奏は、客席で聞いたことないんで、どうなのかな~?(笑)。
―― 先生には「SHOBI SUMMER BAND FESTIVAL 2009」で1年生バンドの客演指揮をお願いしましたが、
指揮者が替わると、同じバンドなのにガラリと違う音が出ていて驚きました。
(⇒その時の演奏を「SHOBI NET-TV」で視聴)
そうですね、むしろ誰が振っても同じ音だったらつまらないですよね。 バンドのメンバーが指揮やお互いを聞き合って素晴らしいアンサンブルをしていましたしね。 あまりリハーサルの時間を取れなかったので、1回1回の練習を集中して行いました。 せっかくの機会なので「少ない練習時間で本番に挑む」ということを経験してもらおうと思って。
―― 1年生のバンド、いかがでしたか。
とても可能性を感じました。エネルギッシュで、うまく乗せればなんでもやってくれそうな感じで。
バンドの雰囲気もよかったし、楽しかったですよ。高梨先生の指導がしっかり行き届いているからでしょう。
―― 先生はオリジナル作品、それからセレクション・シリーズなどの編曲作品も幅広く書いていらっしゃいますが、 一方で「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズでもずっとアレンジャーとして参加されていますよね。
実は私、仕事始めた頃はジャズやポップスを書いたことが無くてね。 ドラムセットの譜面の書き方すら全く知らなかったんです。 仕事で実際に曲を書いて、演奏者に習って身につけた部分ですね。 今も勉強してる途上。音楽は何でもそうですけど(笑)。
―― 先生の作品は、「小編成でもよく鳴る」というのがひとつの魅力だと感じています。
私も当初は"鳴らない"スコアを書いていたんです。今から思うと。
だからこれはもうほんとにいろんな地方の学校の現場を見て学んだお陰ですよ。
コンクールで全国大会に行くような学校じゃなくて、地方の人数が少ない学校でも、
1人1人はそんなに上手じゃなくても、すごく熱心に取り組んでいらっしゃるところがたくさんある。
SHOBI の伊藤先生にそういうところをいろいろ紹介してもらって、たくさんスコアを書かせてもらって。
―― 先生のアレンジ作品の中でも特に有名な『喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション』も、 もともとは小編成のために書かれたスコアだとか。
そうそう、石川県にある中学校のために書いたスコアです。30人ぐらいの編成のバンドでしたね。
レハールの作品というのは実はそれまであまり馴染みがなかったんですが、編曲をお願いされて聴いてみたらすごく良かった。
学校の先生ってすごいなって思いました。本当に視野が広くていろいろ知ってる。
そんな方々の意見もいただきながら、生徒さんがあまり苦労せず楽しく演奏できるようにするにはどうすればいいかなって考えていろいろ試行錯誤しました。
プロのバンドを想定してスコアを書いても、それが学校の現場にはふさわしくない場合があります。 1本1本が上手くないと演奏が成り立たない譜面、ですね。 たとえば「ローマの松」3楽章のクラリネット・ソロの部分、伴奏もクラリネットで書いてみたら、ソリストの方から「ソロ吹いてる隣で同じ楽器に伴奏も吹かれると、ちょっとな~」って言われたことがあって。 このアドバイスもすごいんですけど(笑)。 結局、伴奏のパートを金管楽器のミュートにして、ホルンに"pp"のハイトーンを20小節ぐらい伸ばしてもらったり(笑)。 プロの吹奏楽団だからそれは可能だったんですが、例えば初心者の多い学校ではそうはいかないでしょ。 いろいろな意味でプロ&アマチュアの現場というのは、すごく勉強になるんです。
―― なるほど。
私はこのように、仕事しながらいろいろ学ばせてもらっています。 SHOBI のように、学校内で細かい事を学べるのはうらやましい。 それに、今は吹奏楽の曲を書いている人、いっぱいいるじゃないですか。 それってすごく励みになると思う。私が学生の頃はまだあんまりいなかった。 (私の場合は逆に人がいなかったから仕事が来たのかもしれないな(笑)。)
―― 今、吹奏楽の道を志している学生へのメッセージをお願いします。
吹奏楽を取り巻く状況は今とても恵まれていると思います。
まずやっている人がいっぱいいるし、楽器の技術的なレベルも高くなっているし、
優れた楽譜もたくさん出版されていて、聴いてくれるお客さんの数も当然多い。
メディアもそう。昔はこんなにCDも出ていなかったし、テレビで取り上げられる事なんてなかった。
でも、今の状況がいつまで続くかは誰にも解らない。
だから、周囲の流れに乗っかっていくのではなく、自分の足下をしっかり見て、
時間がかかってもいいから着実に一歩一歩進んでいくことが大事だと思います。
学校生活をそのスタートといいますか、仕事を始める前の準備期間として有効に活用してください。
今は環境も整っているわけだから、勉強しようと思えばいくらでも勉強できる。
まずは自分の足下をしっかり踏み固めて、とにかく自分の得意とするものを1つでもいいから見つけて、
それを背負って歩んでいっていただければ、より楽しく音楽を続けていけるのではないでしょうか。
―― ありがとうございました。
【鈴木英史 プロフィール】
1965年東京都生まれ。'91年東京藝術大学大学院音楽研究科作曲専攻修了。作曲を間宮芳生、遠藤雅夫、指揮を遠藤雅古の各氏に師事。'87年に安宅賞、'01年年第11回日本管打・吹奏楽アカデミー賞(作編曲部門)を受賞。国民体育大会('91年石川,'92年年山形)式典音楽、国民文化祭創作音楽('02鳥取)等を担当。オーケストラからソロ、クラシックからポップスまでの作編曲活動を中心に、指揮、CD企画、講習、審査、音楽誌への執筆など幅広く活躍。日本音楽著作権協会正会員、日本管打・吹奏楽学会執行委員。2010年度よりSHOBI アーティスティック・パートナー。<主な作品>
●オリジナル
「ライフ・ヴァリエーションズ~生命と愛の歌」/「カントゥス・ソナーレ」/「鳳凰~仁愛鳥譜」/「信長~ルネサンスの光芒」/「大いなる約束の大地~チンギスハーン」/「鳥のマントラ/萬歳楽」/「吹奏楽のためのプレリュード~時計台の鐘の旋律による」/「スパイラル・タワー」/「ソング・アンド・ダンス」●アレンジ
喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション/喜歌劇「小鳥売り」セレクション/喜歌劇「こうもり」セレクション/喜歌劇「微笑みの国」セレクション/喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクション/喜歌劇「伯爵夫人マリツァ」セレクション/喜歌劇「チャルダッシュの女王」セレクション/そのほか「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズ、「ポップスステージ」シリーズなど多数作品集CDに『チャルダッシュ~カントゥス/鈴木英史 吹奏楽の世界 vol.1』(ブレーン・ミュージック)
(2010年3月掲載)