尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

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【学科長コラム】 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)

2007年12月17日〜25日まで、東京ミュージック&メディアアーツ尚美 学務学生部から依頼を受けて、アメリカ(ニューヨークとシカゴ)の音楽事情を視察してきました。その中から、シカゴで開催された「ミッドウエスト・クリニック」の様子をレポートにまとめます。
(管弦打楽器学科 科長 伊藤 透)

【もくじ】
→ 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

●シカゴってどんなところ?

シカゴ(英語:Chicago)はアメリカ合衆国イリノイ州の大都市で、ミシガン湖の南西岸に位置しています。日本で言うと北海道函館市と同じ緯度です。人口はニューヨーク、ロサンゼルスに次いで3番目、経済・金融面ではアメリカ第二の規模を持ち、北米を代表する世界都市です。
2016年夏季オリンピックの開催都市に立候補して東京都と競っていますが、大阪市とは姉妹都市の関係にあります。2つのプロ野球チーム(カブス、ホワイトソックス)があり、今春よりカブス入りする福留孝介選手を歓迎するポスターもありました。

今年のシカゴは少し雪が積もっていましたが、それほど寒くはありませんでした。街の真ん中にシカゴ川が流れていて、ミシガン湖(写真手前)に注いでいます。私の宿泊したシェラトンホテルもこの川沿いにありました。正面にMBCビルがそびえ、その隣には有名な新聞社、シカゴ・トリビューンの本社ビルがあります。後ろに見える橋はメイン通りの一つ、ミシガン・アベニューにかかる橋なのですが、船が通るときには両脇に跳ね上がり、道路はたちまち大渋滞となってしまいます。川の左側が旧市街で、右側は近代的なビルがたくさん立ち並び、郊外の住宅街へとつながっています。

●ミッドウエスト・クリニックってどんなところ?

このイベントは、毎年12月中旬シカゴ市内のシカゴ・ヒルトン・ホテルで開催され、昨年で61回を数える世界で最も有名で歴史ある音楽イベントの一つです。世界各国から約2万人もの参加者があると言われています。米国をはじめ世界各国の吹奏楽団、オーケストラ、ジャズ・バンドの演奏が聴けるだけでなく、世界でも一流の指揮者、指導者、演奏家による演奏法・指導法のクリニック等もたくさん開催されます。また、350を超える音楽企業のブース出展などもあり、音楽関係者には見逃せない内容です。今回は残念ながら日本からの参加団体はありませんでしたが、1990年には尚美ウインドオーケストラも出演し好評を博しています。

ミッドウエスト・クリニックの会場であるヒルトン・ホテルには沢山のコンベンションルームがあり、演奏会や講習会、資料展示、プレゼンテーションの場として利用されています。メインの演奏会場であるInternational Ballroomは約2000名も収容できる大会場ですが、いつもたくさんの熱心なバンド関係者であふれています。
今年のメインコンサートはSeries A、Series B の二つプログラムが用意されてあり、クリニック参加申し込み時にそのどちらかを選択できるようになっています。当日、会場受付した際に希望したシリーズのチケットをもらうことができます。

●ミッドウエスト・クリニックの展示ブースでお会いした方々(前編)

■Mr. CLARK McALISTER(カルマス社)

日本でも多くの楽譜を出版しているカルマス社(EDWIN F.KALMUS & Co, INC)の副社長クラーク・マッカリスター氏。彼はマイアミ大学でフェネルから指揮法、リードから作曲を学んだ唯一の学生だったことを大変自慢しています。会社も自宅もマイアミにある関係で、リード家とは家族ぐるみの付き合いで、「リードの息子」と自称しています。彼の仕事は楽譜編集が中心ですが指揮や作曲も手がけ、楽譜の出版もいくつかあります。
またマッカリスター氏は、最近日本の吹奏楽ファンの中でも有名になってきたklavier-recordsの音楽ディレクターの仕事もしています。このクラヴィア社からはアメリカ空軍バンドや度々来日するコーポロン氏の素晴らしい録音がリリースされています。その他、日本では知られていないオリジナル曲も発見できるかもしれません。興味のある方はぜひ下記のホームページにアクセスしてみてください。http://www.klavier-records.com/

<訃報>
実は今回、マッカリスター氏から大変悲しい報告がありました。世界の吹奏楽に多大な影響を残したアルフレッド・リード博士が2005年9月17日に永眠されたのは記憶に新しいところですが、その後元気がなかったマージョリー夫人も、昨年10月に後を追うようにして亡くなられたとのこと。心よりご冥福をお祈りします。

■村上 健 社長(BRAVO MUSIC)

BRAVO MUSIC は、日本のブレーン株式会社がアメリカに設立した現地法人です。今回も村上社長自らブースの陣頭に立ってセールスされていました。SHOBI も毎年、オリタ・ノボッタ先生プロデュースの「スタンダード・ブラス」の録音や、課題曲の解説ビデオ制作などで大変お世話になっています。また、SHOBI のバンド指導の先生方や作曲の先生方の作品もここから多数出版されています。ブースでは日本の優れた作曲家の作品やプロの演奏団体、学校吹奏楽の活動や、さらにはハイレベルな日本のコンクールなどが紹介されており、日本の吹奏楽の窓口として大変ご尽力されていると感じました。

■The United States AIR RORCE BAND

今回もいくつか公務員音楽隊のブースがあり、CDやパンフレットを配布して大いに広報宣伝活動をしていました。ミッドウエストには沢山の大学生や高校生も出演するので、そのメンバーをターゲットに優秀な学生を募集しようという狙いです。エア・フォース・バンドは演奏の素晴らしさは勿論のことですが、毎年いろいろな作曲家に作品を委嘱して世界の吹奏楽のレベルアップとレパートリーの拡大に努めています。最近日本の吹奏楽コンクールで有名になったピ−ター・グレイアムの「ハリスンの夢」などもその一つですが、いずれも演奏グレードが高い事で有名です。

■Southern Music Company

日本でも大変有名なアメリカの楽譜出版社であるサザンミュージック社は楽譜卸売業社としても幅広く営業していて、全世界とのネットワークを構築しつつあります。日本ではミュージックエイト社が強いコネクションを持ち、同社の楽譜をいち早く日本のユーザーに届けています。広いブースでは、マクベス、バーンズなどの大物作曲家たちが世界から来ている吹奏楽ファンに対応していました。

私が高校2年のときに行った、アメリカ・ノースダゴタの「インターナショナル・ミュージック・キャンプ」で、第3週目の指揮者として指導していただいて以来の再会でした。片言の英語でご挨拶しましたが、先生がそのときのことをよく覚えて下さっていたのには大感激。このキャンプでは世界の一流指揮者が講師として来ていて、当時イギリスの海兵隊バンドの指揮者だった、ヴィヴィアン・ダン中佐も指揮しておられました。私の専攻であったユーフォニアムでは、当時アメリカ一の名手と言われた元海兵隊バンドソリストのH.ブラッシュ氏が講師で、貴重なレッスンを受けることが出来ました。
ちなみに、もう一人の日本人高校生はトランペット奏者の関山幸弘氏(NHK交響楽団)です。彼は毎週あるオーディションではいつも一等賞で、当時から高い技術力と抜群の音楽センスは注目の的でした。また、日本人離れしたおおらかなキャラクターは、「YUKKI」の愛称で親しまれ、特に女子高校生には人気抜群でした。
尚、帰国して関山さんに電話でこのことを報告したところ、1982年文化庁派遣在外研修員としてイリノイ州のノースウェスタン大学に留学中、やはりミッドウエストでマクベス氏にお会いしたとのことでした。懐かしい思い出です。

■Mr. James Barnes

J.バーンズ氏とは日本のマネージャーである株式会社エーピーアイ社長の青山均氏に紹介されて15年ほどのお付き合いをさせてもらっています。今回も大変忙しい中、時間を割いて三人で昼食を取りながらお話をすることが出来ました。J.バーンズといえば、誰もが知っている「アルヴァマー序曲」(電子オルガンやマンドリンオーケストラにも編曲されています)や「パガニーニの主題による幻想変奏曲」、大作の「交響曲第2番」で有名です。日本からの委嘱では、陸上自衛隊50周年で作曲した「第5交響曲・フェニックス」、神奈川県立逗子高校の創立80周年記念で作曲した行進曲「YAMAMIDORI」、川崎市教育委員会が委嘱した「March KAWASAKI」などがあります。
バーンズ氏は現在、カンザス大学の作曲科教授としても忙しい日々を送っておられます。底抜けに明るい性格で誰にでもフランクに接してくれます。日本も大好きなようで毎年来日されています。今回エア・フォース・バンドからもらったCDのオープニングはバーンズが2002年に作曲した「Dreamers…」、トリは2006年に作曲した「Wild Blue Yonder」という2曲が録音されていました。今年59歳で作風にも脂がのってきて、今後の新曲や指揮活動がますます楽しみです。

<ちょっとブレークタイム>
楽譜展示ブースで日本マーチングバンド指導者協会前理事長の原田元吉先生と洛南高校吹奏楽部指揮者として活躍された宮本輝紀先生に偶然お会いしました。宮本先生には全日本高等学校吹奏楽大会で、尚美ウインドオーケストラが毎年とてもお世話になっています。(帰国に際し、原田先生とはちょっとした事が起こりました。)

>>「第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)」へ続く。

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