尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2011年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて

SHOBI講師陣による課題曲講座

 

III. シャコンヌ S(新実徳英)

パート別ワンポイントアドバイス(ファゴット編/講師・多田逸左久)

吹奏楽を愛する皆さん、楽しく楽器を吹いていますか?
さて、今日はコンクール課題曲を演奏するに当たり、ポイントになる点を、皆さんと共に考えてみたいと思います。まず、どの曲にも共通する基本方針を確認しておきましょう。

■(1)楽譜を忠実に演奏する

「そんなの当たり前!」と思うかも知れませんが、自分ではそうしているつもりでも、実はできていないということが意外に多いものです。その上、作曲家は、自身で表現したいことの全てを譜面に書き表している訳ではないので、せめて書き記されていることは100%リアライズするのが、私たち演奏者の務めであると考えます。常に初心を忘れず、楽譜に忠実な演奏を心がけましょう!
言うまでもありませんが、“楽譜を忠実に演奏する”ためには、“楽譜を正しく読む”ことが前提となります。楽譜を“ドレミ”で、声を出して読んでみましょう!

■(2)表現を大切にする

楽譜を忠実に演奏しただけではまだ十分とは言えません。それに加えて、というよりは、むしろそれと同じくらいに大切なことがあります。それは、皆さんが「目の前の曲をどのように演奏したいか」という“気持ち”です。その上で、その気持ちを表すにはどうしたら良いかを考え、その通りに演奏できるよう練習することが大切です。
そこで、楽譜を“ドレミ”で読む際は、f は大きい声で、p は小さい声で、クレッシェンドはだんだん声を大きく、スタッカートは短く、アクセントは強調して、というように表情を付けて読むようにしましょう!そうすると、自分の気持ちがよりリアルになり、演奏に生きるようになります。
楽譜を忠実に演奏しながら、最大限自分なり、自分たちなりの表現をすることが音楽の難しいところであり、そして最も楽しいところでもあります。

■(3)スコア(総譜)を見る

吹奏楽はひとりではできません。ただ自分の気持ちを表現するだけでは、うまくいかないときがあります。そんなとき、皆さんの気持ちをひとつにするためのアイテムに、“スコア”があります。
スコアを見れば、自分が全体の中でどんな役割を受け持っているのか、自分は誰と同じことをしているのかを簡単に確認することができます。ですから、パートリーダーだけが見るのではなく、皆さんそれぞれが見て有効活用してください。

■(4)参考演奏CDについて

参考演奏CDが全日本吹奏楽連盟からも出ていますが、使用にあたっては注意が必要です。 皆さんは、楽譜を忠実に演奏しながら、自分たちらしい演奏を目指しているわけですから、そのために役立つような聴き方をしなければいけません。参考演奏を聴いて先入観を持ち、それが皆さんの個性的表現を妨げ、いわゆる“模倣”にならないように十分気をつけてください。そういう意味では、参考演奏CDを聴かないのも、ひとつの選択肢であると考えます。

以上が、各曲に共通する基本方針です。作曲家のコメントも参考にしながら、自由にイメージを展開してください!
次にそれぞれの曲について、演奏上のポイントを考えてみましょう。ファゴットだけに適用される点と、他のセクションとも関係する点をおりまぜながらあげていきますが、ページの都合で、すべてはカバーしきれませんので、自分たちで臨機応変、補うようにしてください。
原則として、バスクラリネット、テナーサクソフォーン、バリトンサクソフォーン、トロンボーン、ユーフォニアム、テューバ、コントラバスとは、指摘がなくとも連係することを前提に進めていきますが、それ以外の楽器とも、動きが同じであれば、シンクロナイズすることは言うまでもありません。また、音程についても、原則的として皆さんで修正することとします。特に、完全音程(1度・4度・5度・8度・・)は、うならないようにしましょう!!

「シャコンヌ S」のポイント

・ファゴットは、この曲でいわゆる「オスティナート・バス(執拗低音)」を受け持っています。楽譜を見れば分かる通り、記されている情報は、「現代曲」に比べるとかなり少ないと言えます。つまり、演奏者は、楽譜に書かれていることは最低限リアライズしなければならないと同時に、敢えて書かれていないことも汲み取って演奏しなければなりません。

例えば、練習番号[6]から8小節間続くDの音を、同じように吹いてはいけません。メロディとリンクして、表情を付けて演奏する必要があります。シャコンヌの演奏法の一つに、オスティナート・バスが主導権を握ることがあります。ここは、正にそれを発揮して欲しい所です。他のバス担当楽器と連携して、全体をリードするつもりで演奏してください。

この曲も、残念ながらファゴットがオプション(任意)になっています。「どうせオプションだから‥」と思わずに、ダブルリード楽器特有の「音の立ち上がり」を生かし、大いに存在感をアピールしましょう!“オプション”は、「加えても良い」というのではなく、「加えることで、より表現の幅を広げる」と考え、むしろ全体を支配するつもりで演奏しましょう!

まとめ

『始めに気持ちありき』
一番大切なものは皆さんがどう演奏したいかという“気持ち”です。「その気持ちを表すにはどうしたらよいか?」ということから、すべてが始まります。どんな音が必要で、その昔を出すにはどう練習したら良いか?つまり“テクニック”も、気持ちを表すために必要だということです。

『表現は大げさに』
自分ではそう吹いているつもりでも、人にはそう聞こえていない事が良くあります。表現はより大げさに、自分で思っている10倍くらいするようにして、やっと人に伝わると思ってください。 そして、試行錯誤を経て「個性を追求した独創的な演奏」が生まれます。今年も、世界に一つしかない、皆さんだけの演奏を目指してください。期待しています!!

【多田逸左久プロフィール】
1978年東京芸術大学音楽学部器楽科入学。ファゴットを三田平八郎氏に、室内 楽をアンリエット・ピュイグ=ロジェ、吉田雅夫、中川良平の各氏に師事。82年同大学卒業。同年同大学大学院音楽研究科入学。フリッツ・ヘンカー、岡崎耕 治の両氏に師事。84年同大学院修了。同年9月渡独、ハンブルク音楽院に入学。88年4月フライブルク音楽大学に移籍。89年2月帰国。以後、フリーラン サーとして様々なジャンルで演奏活動を行う傍ら、日本ファゴット(バスーン)協会事務局の一員として、ファゴットの普及活動にも携わっている他、東京シン フォニエッタのメンバーとして現代音楽にも積極的に取り組んでいる。