尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2011年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて

SHOBI講師陣による課題曲講座

 

III. シャコンヌ S(新実徳英)

天野正道先生・佐藤正人先生・渡辺由美子先生による鼎談

佐藤―― 今年に限らず、今までの課題曲のなかでも味わい深い作品ですね。

天野―― さすがとしか言いようがない。小編成でも出来るように書かれているね。

佐藤―― 木管に弦楽器セクションのイメージがあります。

天野―― そう、Euph.もチェロのイメージかもしれない。バッハのシャコンヌも演奏してみると良い。

佐藤―― 速度指定は少し速めに感じますね。

天野―― そうだね。およその目安と考えて、演奏者の考えているようにやってみればいいと思う。

佐藤―― 必ずしも舞曲というか、クラシックのシャコンヌの2拍目の重心という訳でもないですね。

天野―― そこが現代的なのかな。

佐藤―― バスの主題がどんどん繰り返されていくわけですね。冒頭のBass.Cl.(Bassoon)とCl.セクションのフレーズやグルーピングの考え方がとても大事。もしかしたら、音量はp だけど響きは人数が必要かもしれません。

天野―― そうだね。[1] ~[12] までそれぞれモティーフがどのように変化していくか見ないと。

佐藤―― [1] →[2] →[3] と楽器が変わっていって、[4] で変化が大きくなりますね。

天野―― [3] で3連の動きが出てきて、[4] は明確な旋律が無くなるのかな?オプションの楽器があるといいなぁ、コントラバスが特に。[3] の部分、オプションなしだと低音がトロンボーン3番だけになってしまう。

佐藤―― Sax.は、ちょっと音域が厳しいですね。バリトンサックスの16分音符とのバランスも注意。

天野―― オーケストラの感じで作っているのだろうね。

渡辺―― スネアドラムは管と一体感ほしいです。弱奏でビビらないように、ミュート等工夫して、しっかり演奏したいですね。

天野―― [4] はCl.とSax.の分散和音の8分音符の動きと、16分音符、3連符が組み合わさって歪んだように聴こえさせている。

佐藤―― 主題はCl.とSax.ですね。伴奏の形や重心も変わりました。[3] からのホルンの伸ばし(Aの音)も保持されている。

天野―― うん。このTrp.、Picc.、Fl.2のAの持続も大切。[5] からもリズムを変えてAの音が持続しているね。さすがだなぁ。

渡辺―― スネアはここからcresc.全体の中の音量や聴こえ方、ピッチも大事ですね。刻みにTrp.やTrb.が入ってくるので、スネアもここからアピールしていく。

佐藤―― 主題は8分音符スタッカートがあるセクションに。少しオスティナートのパートより聴こえ難いかもしれないので、しっかり吹きたいです。[5] は劇的です。[6] へ入るときのニュアンスの変化や表現は演奏者の力量が問われますね。

天野―― ここは指揮者のセンスがわかるなぁ。[6] からはテーマが変化した形。ハーモニーはA♭on D → Gm on D → F#m on D…って半音ずつ下がってくるような形になってるけど、ベースにDが持続しているのでちゃんと関連性がある。

佐藤―― 1st Cl.はハイノートをpで演奏するところを丁寧に。前半4小節をしっかり吹くと相対的に吹きやすいかな。2本から1本とか工夫が必要。フレージングにも気をつけたいです。

天野―― [7] 2小節前のソフトアクセントの扱いをどうするか、だね。ここはコントラバスのピッチカートがいないと印象が変わるな。オプション楽器を抜いてしまうと低音の持続がBar.Sax.だけになってしまう。

佐藤―― [7] は[6] とセットになっている。55、56小節~ [8]も指揮者の腕の見せ所ですね。

天野―― フェルマータも大事だね。それから[3] からに出ている16分音符の三連符、これは大事な要素でしょう。[8] からは(練習はメトロノームでやっても)本番のドライヴ感が演奏の聴き映え決めるね。

佐藤―― [8] の前のフェルマータの音の切り方、テヌートアクセントと低音の伸ばしは、同じ長さに。音量は[8] が頂点ですが、TuttiであえてSax.を抜いて、[9] からSax.を入れることで音色を変化させていますね。

天野―― そうだね。[9] は主題の音程が変わっているが、リズムは同じ。反復進行になっている。
まとめると、コード進行がそれまでと同じ(または似ている)ところは、時々主題を大きく変えて変化を持たせている。コード進行が同じだから主題が大きく変わっていても認識できるわけ。[4] や[5] などがそう。逆に、コード進行が変わるところはメロディーの音型は同じになっている。[6] や[9] などがそう。この2つのアプローチで曲全体の統一性、シャコンヌの一貫性をもたせている。

佐藤―― はい、もっと掘り下げてスコア読まないと。[10] に向かってストレッタというか、速さや音量だけでなく、高揚感を増しながら演奏するところ、テンポ90で[10] に入り、更にクライマックスを迎えて、77小節~音楽の緊張感が波が退くように変化するところの表現など、奥が深いです。しかも、アンサンブルもリズムの絡みが正確じゃないと上手くぶつからない?というか緊張感が出ない。

天野―― いつも主題がどこにいるのか明確にわかるように演奏すると良いね。伴奏の変化も意識して。[10] はJ.S.バッハのシャコンヌの重音奏法のように、頭の音を短くしている。これはすごいなぁ。

佐藤―― 最後は印象深い余韻を残して終わります。これは演奏者・指揮者やりがいありますね。

渡辺―― 全体的に主題や伴奏に対してのバランス、特にスネアドラムと管楽器のバランスに気をつけたいですね。クラッシュシンバルの演奏方法も音色がとても大切です。

佐藤―― ありがとうございました。