尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

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[特別編] 小澤 俊朗&大井 剛史 対談

指揮者、指導者としてこれまで幾多のバンドを育て、吹奏楽を知り尽くした小澤 俊朗。
そして近年、吹奏楽のフィールドでも目覚ましく活躍している注目の指揮者、大井 剛史。
ふたりの目に映る「吹奏楽」とは。
吹奏楽のこと、音楽教育のことなどを語っていただいた。

(聞き手:伊藤透/管弦打楽器学科 科長)

―― 先生方、本日はお忙しい中お時間を頂戴しありがとうございます。今日は東京佼成ウインドオーケストラの正指揮者になられた大井先生をお招きして、小澤先生と一緒にこれからの吹奏楽のこと、音楽教育のこと、尚美のことなどについてお話ができればと思っております。お二方、どうぞよろしくお願い致します。
さて、過日9月15日(月・祝)、尚美バリオホールにて『尚美ウインドオーケストラ 第39回定期演奏会』を開催しました。大井先生にはお忙しい中ご来場いただきましてありがとうございました。以前サントリーホールで尚美ウインドを指揮していただいたことはありましたが、演奏を客席で聴かれたのは今回が初めてでしたよね。いかがでしたでしょうか?

大井: 大変楽しませていただきました。以前、私が指揮したときにも思いましたが、尚美の学生はなんていうかとても真摯ですね。今回の演奏会も「先生についていこう」という意思が感じられる演奏で、好感をもって聴いていました。

―― ありがとうございます。今回の定期演奏会でも指揮してくださった小澤先生は、34年前の1980年から現在に至るまで、尚美の吹奏楽をずっと指導してきてくださいましたね。

小澤: 34年前...私はまだ36歳でした。当時の尚美には教育科という中学校の教員免許を取得できる課程があり、ほとんどの子が教員目指して頑張っていて、プレイヤーになりたいという子はどちらかというと少なかったですね。最近ですとプレイヤーになりたい子、指導者になりたい子と結構はっきりしてきていて、入学時点で目的意識を持っている子が増えました。

―― 専門学校や音楽大学で吹奏楽を指導する上で、また学生たちが学んでいく上で一番大事なことはどういったことだとお考えですか?

小澤: 教師という立場でいうと「学生の夢を叶える」ことがまず当然であって、実際にそれを叶えるためには、やはり基礎・基本をしっかり身につけ「合わせる・揃える・整える」、その上で「主張する」ことができるのが大事だということをずっと教えてきたつもりです。これは小中高の先生方向けの講習会でも市民バンドの大人相手でも同じですし、大学生でも同じです。特に音楽大学、音楽学校の学生は、吹いたり叩いたりという"作業"については本当に一生懸命に取り組むんですが、"合わせる"ということに関しては最初のうちはあまりピンと来ないみたいで...そんな基本的なことを、ずっと教え続けてきました。

―― 尚美は長い歴史のなかで、音楽学校では初めて「吹奏楽専修コース」を設置しました。小澤先生にはその中で吹奏楽指導者になるための教育をお願いしてきましたが、ここで改めて、吹奏楽指導者になるためにはどんなことが大事だとお考えですか?

小澤: 吹奏楽指導のカリキュラムは中学校や高等学校のスクールバンドにおける指導を前提にしています。スクールバンドを指導するということは、合奏指導をする以前に、たとえば人間関係の構築だったり部活動・バンドの運営といったことのほうが実は大変です。そういったことも考慮しながら、例えば「なぜ音が合わないの?」ということを、理論に基づいて教える必要があります。いわゆる根性論とか、ただがむしゃらに「とにかく吹けー!」ではなくて(笑)。私が子供の頃は理論なんて全く確立されていなくて、ただひたすら根性論一辺倒で。でも、自分が専門的に音楽を勉強していくと「こういうことは教えてくれなかったな」という発見がたくさんあったんです。それを学生になるべく短い時間で解りやすく教えるにはどうしたらいいか?と考えて、そのためにはやはり基礎・基本の理論からきちんと教えないといけないのではないか、と思いました。例えば、簡単なことなんですけれど「管楽器は息で音を出します」ということが解っているようで実は意外と解らない。「うちの生徒はフォルテが出せません、ピアニッシモが出せません」というのはそういう「息」が出せていないということで、その原理を理解したうえで指導すればガラッと変わるのに、そのことになかなか気付けないんですね。また、ピアノのような鍵盤楽器と同じ感覚なのか、指(フィンガリング)さえ合っていればあとは息を入れれば音が出ると思われている。「管楽器は作音楽器だよ」ということを昔は誰も言ってこなかったので、色んな場面で文章に書いたりお話ししたり、学生にも言ったりしてきました。打楽器だって、同じ楽器でも叩き方やマレットで音が全然変わる。そうやって音楽に合った音を選択して「音を作る」という意識、それが音楽をつくっていくということに繋がるのではないかと思います。

―― なるほど、おっしゃるとおりですね。

小澤: 音楽大学の難しいところは、ひとりひとりの学生がみんなソリストを目指して必死に勉強していることが多いんです。でも、みんながみんなオーケストラに入ったりソリストになれるかというともちろんそんなことはなくて...。だったら、学生時代にアンサンブルなり吹奏楽なりで「合わせる技術」をもっときっちり身に付けたほうがいいと思うのです。合奏のテクニックをきちんと学んだ人はソリスト以外の道も選べるけれど、そうでない人は苦しいですよね。

―― 実は昔、私がまだ藝大の学生だった時に、小澤先生に吹奏楽の定期演奏会にお越し頂いたことがあるんです。そのときは打ち上げまで来ていただいて、そこで率直な感想をたくさんくださったのですが、それはそれは手厳しいことも言われ...(笑)。要するに個々が技術的に吹けているだけでは吹奏楽にならないぞというようなお話で、当時は耳が痛かったですが、それでも小澤先生にいろいろアドヴァイスをいただき、本当に勉強になりました。

小澤: アメリカの吹奏楽界の頂点は軍楽隊なんですけれども、そのバンドはプレイヤーひとりひとりの奏法がみんな揃っていて、たとえばコルネットなりトランペットなりが10人くらいいても、みんな同じ音がするんです。あれは見事だな、と思いますね。誰もがソロを吹ける上にそれを揃えられるというのは本当に凄い。日本でも早くそうなってほしいなという思いです。

オーケストラと吹奏楽

―― 大井先生は今年度から東京佼成ウインドオーケストラの正指揮者に就任されたほか、山形交響楽団やニューフィルハーモニーオーケストラ千葉などオーケストラの指揮者としてもご活躍されていますね。吹奏楽とオーケストラではサウンドや表現などをつくっていく上で、それぞれ違った魅力、またご苦労などあると思いますが、どういう風に感じられていますか?

大井: よく吹奏楽はオーケストラと比べてどうか、みたいな話になるんですけれど、たとえば木管五重奏と合唱が比べられないのと同じように、同じ音楽ですがやはり違うものであることは確かだと思います。オーケストラは弦楽器の響きの上に管楽器が乗っかっていきますね。弦楽器というのは呼吸ではなく弓のダウン・アップで表現するので、音楽の流れがつくりやすい部分があります。それに対して管楽器は、当然みんな息を吐いて音を出すので、相当のイマジネーションと「管楽器である」という意識がないと、音楽がすべてダウン・ボウみたいになってしまう。オーケストラに比べて管楽器の本数自体が多い吹奏楽では、いとも簡単にダウンばかりの音楽に、言い換えれば流れのない音楽に陥りやすい。これは吹奏楽という編成の持つ特性上の問題なんですね。そういう違いを意識して、吹奏楽であってもダウン・ボウもアップ・ボウもあるような音楽を作るよう、心がけています。

小澤: 弦楽器の真似は管楽器じゃできないけれど、そのニュアンスやフレージングは勉強しなければいけない、ということですね。私も昔オーケストラで演奏していたので、そういう弦楽器特有のフレージングを常に気にしています。今はテレビなどでも手軽にオーケストラが演奏している映像を観れますから、そういうのを観て参考にしなさいと言えば、尚美の学生や大学生だと理解してくれるんですけど、子どもたちの指導だとなかなかその辺りの理解が難しいみたいです。尚美の学生は吹奏楽だけでなくオーケストラもやるので、弦楽器のフレージングの勉強もできてとても良い環境ですね。これからの吹奏楽はアマチュアでもそういうところにこだわるべきだと思います。

大井: そうですね、あと私は合唱をすごく意識するんです。合唱って声を出すときは管楽器と同じように息を吐くだけなんですけれど、ちゃんと音楽にフレーズがあるじゃないですか。吹奏楽も絶対、同じようにできると思う。

小澤: 専門は声楽だけれど吹奏楽の指導がとても上手な先生もいらっしゃいますよね。そういうところも、これからの指導者は勉強するといいですね。私は昔、都内のオーケストラにいつもエキストラで呼んでもらっていたんですけれど...あるとき音楽鑑賞教室で吹奏楽を編成して演奏したんですが、そのときの体験が未だに忘れられないんです。音大の授業でやった吹奏楽とは全然違う響きになって、ちょっとしたショックを受けました。音色に透明感があって、そんなに力まなくても自分の音がよく響いて、まわりの音もよく聴こえて感動しました。

―― 今やプロのオーケストラの管楽器奏者にも吹奏楽経験者がたくさんおられます。オーケストラの曲をアレンジして吹奏楽で演奏するのは昔から盛んですし、最近だとオーケストラが管打楽器セクションだけで吹奏楽をやったりと、吹奏楽とオーケストラの垣根が昔より随分低くなってきたなと思います。

これからの日本の吹奏楽

―― アカデミックな方面の研究・開発も近年精力的で、小澤先生は邦人作品を世に出す取り組みをされていたり、日本管打・吹奏楽学会の理事長としての吹奏楽の指導法講習や国際交流など様々な活動をされていると思いますが、日本の吹奏楽のこれからの課題はどの辺りにあると思いますか。

小澤: 日本の吹奏楽は日本独自の進化を遂げてきて、ある意味ではもう成熟していると思います。ただ、世界と比較すると音楽的にはまだ遅れているように思います。技術的な面ではアメリカやヨーロッパを凌いでいるのではないかと思うのですが、こと音楽の内容に関してはまだまだ進歩の余地があるのでは。楽器(ハード)も、国内ブランドが世界的に高く評価されるようになってきて、舶来ではなく国産の楽器でも十分演奏できる、そういう時代になってきていている。演奏技術についても海外からの情報が取り入れられたりしてどんどん洗練されてきています。けれど、その割には日本人の作品(ソフト)がまだまだ少なすぎる。ハードは輸出しているけれどソフトは輸入している、みたいな状態が少々アンバランス過ぎるんじゃないかと思って、邦人作品をまずは増やしていこうと取り組んでいます。幸い日本の作曲家、特に若い人たちはとても興味を持って吹奏楽作品を生み出してくれています。故・三善 晃先生も吹奏楽にたいへん興味を持たれていて、ご自身で作品を書かれるのはもちろん、学生に「吹奏楽作品を書きなさい」ということをおっしゃっていたそうです。オーケストラと比べると再演される回数が圧倒的に多いから、自分の音楽をみんなに伝えたければ吹奏楽の作品を書くのが近道だ、と。今はまだ過渡期ですが、これから先どんどん良い作品がたくさん出てくると思います。片鱗は既にいくつか出てきていて、素晴らしい作曲家も数多くいらっしゃいますね。

―― ジャパンバンドクリニックに行くと、東南アジアからいらっしゃった吹奏楽指導者の方々が日本の曲をいろいろ探されていますよね。

小澤: 先日シンガポールの吹奏楽指導者の方とお話したら、あちらも少子高齢化社会だそうで...日本だけだと思っていたのですが(笑)。韓国もそうで、中国もすぐそういう時代が来る、と。「日本に来たら小編成バンド向けの楽譜がたくさんあってうらやましかった」という話をしていました。日本から世界へ向けて、良い作品が出てくればいいですね。

―― 小編成バンドというのは、アメリカではない取り組みですよね。

小澤: そうですね、アメリカでのスクールバンドというのは選択科目として正規の授業でやっているんです。日本は課外活動でやっていますよね、この違いです。東南アジアでは日本と同じように課外活動として取り組まれていることが多いようですから、状況が似てくるのも頷けます。

―― ところで大井先生は山形交響楽団の正指揮者を務められているほか、山形ゆかりの若手管楽器奏者が集まって活動されている「PRO WiND023」という吹奏楽団も指揮されていますが。

大井: はい、あのバンドは実は山形交響楽団の方が発起人で...その方は演奏には参加されていないのですけれど、他の山響のメンバーが何人か入って一緒に演奏しています。

―― 東京だと音大の卒業生が集まって吹奏楽をやっているというのは珍しくありませんが、地方で、というのが珍しいです。

大井: 山形から巣立っていったプロの音楽家というのは本当にたくさんいるんですけれど、個人個人だとなかなか地元で演奏を披露する、活動を地元の人に知ってもらうということが難しいですが、そういう人たちが、例えばゴールデンウィークやお正月に帰省してきて、地元の人たちに演奏を披露できる場があったら素敵なんじゃないか?ということで始まったのがきっかけのようですね。参加しているのは山形在住のプロの演奏家か、もしくは山形で生まれた、育ったなどの縁があって、そのあと東京などで活躍している音楽家、また山形大学の教育音楽過程で勉強している学生たちといった具合に、山形絡みの人しか基本的に舞台に乗せないんです。お客さんもそれを知って聴きに来るので、1曲目の始まる前から拍手がえらく暖かいんですよね(笑)。今は全国的に音楽を専門に学んだ管打楽器奏者がたくさんいるし、みなさんとても素晴らしいテクニックをお持ちだけれども、プロの吹奏楽団ってそんなに数があるわけではないし、オーケストラも特に管楽器の人が入るのは大変だし、だからどの地域でも「PRO WiND023」みたいなことやったらいいのにと思うんです。

尚美ウインドオーケストラ北海道公演

―― 来年、尚美学園は創立90周年を迎えます。それを記念して、尚美ウインドオーケストラの北海道演奏旅行を企画しております。指揮を務められる小澤先生から、今回の演奏旅行の魅力などをお話いただければと思います。

小澤: 北海道の3都市、札幌・旭川・北見で、客演指揮に作曲家のジェイムズ・バーンズ氏、ソリストとして尚美出身でアドルフ・サックス国際コンクールで優勝した原 博巳先生、そしてユーフォニアムの外囿 祥一郎先生という豪華ゲスト3名を迎えて、二部構成のコンサートを開催します。第一部は私の指揮で、幕開けはおなじみのショスタコーヴィチ《祝典序曲》。これは現地の高校生にバンダとして加わってもらって一緒に演奏する予定です。スパークの《ハーレクイン》では外囿先生のユーフォニアム・ソロで、すばらしい超絶技巧を聴けるのではないかと期待しています。そして《復興》...東北の復興という意味で作曲された作品ではないそうですが、時期が重なったということでコンクールやコンサートなどでもたくさんのバンドに演奏されて、内容的にもとても素晴らしい作品ですので、これも取り上げます。第二部ではタクトをバーンズ氏に託し、氏の最も代表的な作品《アルヴァマー序曲》、原先生のサクソフォーン・ソロで《アリオーソとプレスト》...数年前に一度、原先生と一緒に演奏しましたね、これも素晴らしい演奏を期待しています。そして大曲《パガニーニの主題による変奏曲》と続き、最後には《交響的序曲》を演奏します。最後に序曲、というのもなんだかちょっと変わっていますが、この曲でも現地の高校生と共演する予定で、中間部のサクソフォーンとユーフォニアムのソロはそれぞれ原先生、外囿先生にお願いしてあります。また、来年度の吹奏楽コンクール課題曲も何曲か取り上げる予定です。北海道の皆様には喜んでいただけるのではないのかな、と今から期待しております。

大井: 私はごくごく最近の尚美のことしか知らないのですが、以前はこういった演奏旅行はよくあったのですか?

小澤: はい、特に印象に残っているのは1990年にシカゴの「ミッドウエスト・バンドクリニック」に招かれたときのことですね。...私が着任した1980年の尚美のバンドは、棒を振ってもぜんぜん見てくれないし、しょうがないので指揮台を叩いて練習する...そんな状態からのスタートでしたが(笑)、10年目でシカゴへ演奏旅行に行って、そのときは大成功を収めました。ちょうどオランダのDe Haskeという出版社と、ジム・カーナウさんという作曲家が聴きに来られていて、「自分のところのCDを録音してくれないか?」と言ってくれて、2回くらい録音をしましたね。その頃は国内の音楽大学がまだ吹奏楽にそんなに力を入れていない時代で、"SHOBI"の名前が日本を代表するような形で広まっていきました。翌年もカリフォルニアに行き、ほかにも台湾や韓国、海外との交流などいろいろやりました。最近は国内の演奏旅行が中心になっていますね。

―― 今回の北海道公演は30年前に続き二度目です。近年ではラ・フォル・ジュルネ金沢ミュージック高崎ジャパン、あとジャパンバンドクリニックにはこれまでに二度出演させて頂きました。バンドクリニックについては実は来年も、今度はシエナ・ウインド・オーケストラとのコラボレーションで出演してほしいと依頼を頂いています。

尚美のこれから

―― 2012年9月に大井先生の指揮で、第1回の「シエナ・ウインド・オーケストラ&尚美ウインドオーケストラ コラボレーションコンサート」をサントリーホールで開催し、これが結構話題になりました。それがご縁で大井先生には今年、文京区が毎年主催している『「文の京」の第九』コンサートでSHOBI シンフォニーオーケストラの指揮を振って頂くことになっています。第九コンサートの1曲目にガーシュウィンの《ラプソディー・イン・ブルー》を持ってくるあたりがオールジャンルの尚美らしいかな、と私は思うのですけれど(笑)、大井先生から今回の第九について、こういう演奏会にしてみたい!といった抱負などはありますでしょうか?

大井: まず「第九」の演奏会としてはなかなかない斬新なプログラムですよね(笑)。尚美のオーケストラは私にとってまだ未知数で今から共演が楽しみなのですが、今回《ラプソディー・イン・ブルー》でピアノのソリストを務める小川 万里江さんは尚美の卒業生で、第37回フランス音楽コンクールで優勝されているんですよね。以前もこの「第九」演奏会でラヴェルの《ピアノ協奏曲》を演奏されているということですので、そんな経験を持っている方がラヴェルの影響を強く受けているガーシュウィンを演奏するとどうなるのか?ということにも興味を持っています。

―― 実は大井先生には来年度から本学の客員教授として、オーケストラや吹奏楽の指導をお願いしていくことになっています。尚美ウインドオーケストラも大井先生を中心に小澤先生、佐藤正人先生が支えていくという体制になっていきますが、小澤先生から、尚美の吹奏楽ではぜひこういうことを伝えていって欲しいということはありますか?

小澤: 私は今年度いっぱいで定年になりますのでフェードアウトの方向で...(笑)ここの学生はみんな個性的で、都内から通って来る子もいるし、地方から来る子もいます。でもみんな夢を持って入学してくるので、「夢を叶えるためには、こうしたらいいよ」ということを教えようと私は心がけてきました。サクソフォーンの原君のように入学時点からこいつはすごいぞ、という学生ももちろんいますが、そうでなくてもいわゆる「練習の虫」で、入学後にグッと伸びて、今ではプロの吹奏楽団を中心に活躍している人もいます。そんな"磨けば光る"子たちのご指導も、ぜひお願いしたいです。

大井: 学生ひとりひとりのことをとてもよく憶えていらっしゃるんですね。小澤先生と学生さんが関わる時間っていうのは、基本的には週に1回しかないんですよね?

小澤: 今ではそうですが、以前は吹奏楽の授業が週2回あったんです。そのほかに指導法という授業もあって。指導といっても、自分が専攻している楽器の指導法と、吹奏楽の合奏指導法と二種類ありまして。音大だと楽器レッスンは受けられるんですが、指導法までは学べない。師匠が自分に教えてくれるのを盗んで、それを弟子に教える、という感じだったと思うのですが、この学校ではそれをカリキュラムとしてきちんと教える。

―― 尚美の特徴のひとつですよね。音大を卒業してから尚美に入ってくる人もいますよ。

小澤: 音大だけでなく一般大学を卒業してから、音楽を専門に勉強したいということで入ってくる子もたくさんいます。そういう子たちが夢を持って取り組んでいて、地方や吹奏楽の現場でさらに若い世代を育てているんです。私が教えた当時小学生だった子が、今では尚美の先生をやっていたりもするんですよ。

―― 先生が尚美で教えた一期生だと、もう教頭先生とか吹奏楽連盟の理事長とかになっているような年代ですね(笑)。小澤先生は今年度いっぱいで定年ということですが、引き続き本学の客員教授として我々や学生たちを指導していただきます。そして大井先生には客員教授として、これまでの歴史と伝統を受け継ぎながらも尚美に新しい風を吹き込んでいっていただきたいと思います。お二人の先生方、本日は本当にありがとうございました。

【小澤 俊朗 (おざわ としろう)】
トランペットを小山内一彦氏、和声を兼田敏氏に師事。中山冨士雄氏らと共に金管バンドの結成に参画、東京ブラスソサエティーのコンサートマスターを務め、日本の金管バンドの普及・指導に力を注ぐ。現在、日本を代表するバンドディレクターとして活躍中。本学の客員教授、尚美ウインドオーケストラ指揮者。神奈川大学吹奏楽団音楽監督。「21世紀の吹奏楽≪響宴≫」実行委員長。日本管打・吹奏楽学会理事長。尚美ミュージックカレッジ専門学校 客員教授。

【大井 剛史 (おおい たけし)】
17歳より指揮法を松尾葉子氏に師事。東京藝術大学指揮科を卒業後、99年同大学院指揮専攻修了。故若杉弘、故岩城宏之の各氏に指導を受ける。2000年~2001年、仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者。2007年~2009年、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団にて研修。2008年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで第2位入賞。現在、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉 常任指揮者、山形交響楽団 正指揮者、東京佼成ウインドオーケストラ 正指揮者を務める。国内の主要オーケストラとの共演、オペラやバレエなどの舞台芸術分野でも活躍中。2015年度より尚美ミュージックカレッジ専門学校 客員教授に就任予定。

(2014年11月掲載)
※文中の表現を一部修正させていただきました。[2014/11/14]

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