尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科

<ブログTOPへ戻る <過去のイベントレポートTOPへ戻る

【学科長コラム】 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

2007年12月17日〜25日まで、東京ミュージック&メディアアーツ尚美 学務学生部から依頼を受けて、アメリカ(ニューヨークとシカゴ)の音楽事情を視察してきました。その中から、シカゴで開催された「ミッドウエスト・クリニック」の様子をレポートにまとめます。
(管弦打楽器学科 科長 伊藤 透)

【もくじ】
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)
→第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

●おまけ

★日本帰国に際して初めての飛行体験
シカゴ・オヘア国際空港で同じ便で帰国になった写真右から原田元吉先生(天理高校、東京芸大テューバ1期生、N響、ヤマハ吹奏楽団指揮者として活躍)、写真中央は著者、写真左は、リード、バーンズ、デ・メイの日本マネージメント・エーピーアイの青山社長。靴まで脱がされた厳しい搭乗手続きを終えて、飛行機への搭乗を待っているところ。

★ユナイテッド航空881便 飛行経路
ユナイテッド航空というと、9.11テロのイメージがあって少し気にはなっていたのですが、シカゴから昼に飛び立つというので、これは楽だと思い予約。1時間遅れて一応は離陸したのですが、すぐに日本とは反対側のミシガン湖方面に旋回。その後あちこちを飛んで一向に上昇せず。どうしたのかな〜?

★ジェット燃料を空中で捨てている様子
そのうちに機長からの説明で、これから40分ほど同じところを旋回して、ジェット燃料を捨ててからシカゴ・オヘア空港に戻るので、その間にトイレに行ってくださいの事。ガ〜ン!大丈夫かな〜?原田先生が乗務員に詰め寄ると、「すてきなクリスマス・プレゼントよ!」とのこと。何が〜!?

★それでも無事着陸!
消防車や救急車、パトカーなどがお出迎え。
あたりはもうすっかり夕暮れに…。この後の混雑で、ホテルへの移動も一苦労。

★とにかく飛行機会社が用意してくれたホテルへ
ユナイテッドが用意してくれたホテルは二つあったのですが、最初に間違えて違う方に行ってしまい、再度猛吹雪の中タクシーに乗ってやっと指定されたホリデーイン・セレクトに到着。ホッと一息。ですが、搭乗手続きしたままなので、飛行機の中にトランクが置かれたままなので着替えも何も出来ない状態。

ホテルのビジネスルームでホットメールを立ち上げ自宅と学校の坂本先生にローマ字(当然日本語がかけないパソコン)で事情を説明。それぞれから返事が来て一安心。その後三人で食事。原田先生は芸大の大先輩で、尚美のマーチングでもとてもお世話になっているので、いろいろな話で盛り上がりました。
原田先生も青山社長も50回以上は海外に来ているとのことですが、飛行機が途中で引き返したのは初めてとの事。学校にも家族にも迷惑と心配を掛けてしまい、本当に申し訳ありません。

★しかし、なんと翌日も同じ飛行機!

きっとちゃんと修理できたのでしょう。シカゴはユナイテッド航空の本拠地ですから。機内食のカップヌードル「きつねらあーめん」おいしかったです。

★クリスマス・イブ

I enjoyed myself very much!

★一日遅れて無事帰国
シカゴ、ニューヨークとも本当に楽しく実り多い研修旅行でした。
今後の学校・学科運営、教育指導に役立てて行きたいと思います。ありがとうございました。

(管弦打楽器学科・科長 伊藤透)

【学科長コラム】 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)

2007年12月17日〜25日まで、東京ミュージック&メディアアーツ尚美 学務学生部から依頼を受けて、アメリカ(ニューヨークとシカゴ)の音楽事情を視察してきました。その中から、シカゴで開催された「ミッドウエスト・クリニック」の様子をレポートにまとめます。
(管弦打楽器学科 科長 伊藤 透)

【もくじ】
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)
→第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

●クリニックの様子や資料展示

○Your Band or Orchestra Flute Section REALLY Can Play in Tune !
会場ではたくさんのクリニックが同時にいろいろな所で開催されます。Waldorf Roomでのフルートクリニックをのぞいてみました。
フルートのオーケストラスタディーやバンドスタディーのような内容の講座で、基礎的な音だしの確認から楽曲のアナリーゼやアンサンブルテクニックについてのレクチャーが行なわれていて受講者も多く、大変熱心でした。

○資料展示
クリニックに参加したオーケストラや吹奏楽団、ジャズ・バンドなどの活動紹介や学校紹介等の資料がたくさん置いてあります。事前にそれぞれの団体が工夫して制作したものとのことです。日本のバンドクリニックでは事前にパンフレットを送ると主催者の方で手提げバックに入れてくれますが、ここではあまりにも数が多いのか、「興味ある団体のものをご自由に」というアメリカ流。

●ミッドウエスト・クリニック初日にあわせて行なわれた
イリノイ大学ウインド・シンフォニーの演奏会レポート

イリノイ大学のバンドディレクターとして長年活躍したジェームズF.キーン教授の引退コンサートが、シカゴ交響楽団のホームグランドであるシンフォニー・センター・オーケストラ・ホールで開催されました。このバンドはイリノイ大学の管打楽器専攻生のなかで、最高レベルに達成した学生と大学院生で編成される約60人のウインド・アンサンブル。国内はもちろんのこと、イギリスにも遠征し高い評価を獲得しています。最近ではアメリカ東部にも演奏旅行し、ニューヨークのカーネギーホールでも公演を行なっています。録音も大変盛んに行い、Mark Recordings社から多数のCD等を発売したほか、日本の東芝EMI社からもCDを出し、日本の吹奏楽ファンにも知られています。

ILLINOIS Wind Symphony University of Illinois
James F. Keene, Conductor
[日時]2007年12月19日(水)20時00分開演
[会場]シカゴ シンフォニー・センター・オーケストラ・ホール
[演奏]イリノイ大学ウインド・シンフォニー
[指揮]ジェームズF.キーン

<曲目>
Wild Nights!  Frank Ticheli(2007)
Roma Sacra Luigizaninelli(2007)
Symphony in Bb Paul Hindemith(1951)
Convention of the Cordials John P. Sousa(1909)
Slalom Carter Pann(2003)
Liebestod from Tristan und Isolde(1858)
Fantasia in G Major J.S. Bach(1707)
Bells for Stokowski Michael Daugherty(2002)

キーン教授の退官コンサートということもあって、会場はイリノイ大学関係者が多かったように感じました。また、会場から少し離れたヒルトン・ホテルでは「ミッドウエスト・クリニック」が開催されており、事前にチケットを予約してコンサートに駆けつけた吹奏楽指導者も多くいました。会場となったオーケストラ・ホールは、世界屈指のオーケストラといわれたシカゴ交響楽団の本拠地としてあまりにも有名ですが、音響は決して良くはありません。全体にデッドな響きは管楽器にとってやさしいホールとは言えないでしょう。

当日の曲目ですが、新作を2曲入れて、バンドの有名なオリジナル曲からバッハまで幅広いジャンルの曲を見事に表現していました。日本とは違い、あえてコンクールの課題曲などを演奏したりしなくても、吹奏楽で十分楽しめる内容でした。指揮者のキーン教授も意欲的な新作2曲を手堅く指揮し、退官とは思えない存在感を感じさせていました。新曲を発表した作曲家も来場し、演奏会に華を添えていました。

また、当日は客演として、同大学でオーケストラを指揮しているDonaldo Schleicher氏が一曲指揮しました。本来であれば前任者のHarry Begian 氏(イリノイ大学名誉バンドディレクター)も客演指揮する予定でしたが、ミッドウエスト・クリニック関係で当日キャンセルになってしまった事は大変残念でした。演奏は個人の高い演奏能力とアンサンブル能力がうまくマッチした素晴らしい演奏でした。

この演奏会を通じ、音楽の方向性を多方面から考察して言えることは、ひとりよがりにならず価値観の多様性を認め合うという意味での吹奏楽のレベルアップとアプローチの仕方、それをまとめるプロデュース能力の必要性を強く感じさせられたということでしょう。

●ミッドウエスト・クリニック最終日の夜に行なわれた
シカゴ交響楽団の演奏会レポート

フランス生まれの若手指揮者として活躍しているルドヴィーク・モルローの指揮で世界屈指のオーケストラの一つであるシカゴ交響楽団の演奏会を聴く事ができました。シカゴ交響楽団といえば、ホルンのファーカス 、トランペットのハーセス、トロンボーンのフリードマン、テューバのジェイコブスといった歴史に残る金管楽器の名プレーヤーが揃い、世界一強力なブラス・セクションとして、この交響楽団の一時代を築きました。

指揮者のモルローは2005年にオーケストラ・アンサンブル金沢第181回定期演奏会で来日しているようですが、勉強不足な私としては初めて見る指揮者でした。決して派手だったり、威厳があったりという感じではないのですが、要所をよくまとめた的確な指揮という印象です。

オーボエのユージン・イゾトフは、1973年にロシアに生まれ、これまでメトロポリタン・オペラ・オーケストラ、サンフランシスコ・シンフォニー等の首席奏者として活躍してきました。2005年にダニエル・バレンボイムの推薦によってシカゴ交響楽団の首席奏者に指名され、ロシア生まれ初のメジャーオケ首席として一躍注目を集めました。日本にもバーンスタインの提唱で1990年に札幌を主会場に始まった、パシフィック・ミュージック・フェスティバルの教授として来日しています。
彼の透き通った音色と的確なテクニックとがあいまって、その安定感のあるモーツァルトの演奏はほとんど完璧に近いと言っても過言ではなかったと思います。オーケストラのサポートも見事でした。寒いシカゴの夜に、本当に心がホッとするような素晴らしい演奏に大満足でした。

また、今回の演奏会は曲目がとてもポピュラーな名曲ばかりで、リラックスして楽しめました。「アルルの女」のフルートのソロも抜群。オーボエのソロといい、シカゴ=ブラスというイメージも少し変わってきたのかなと感じました。ただ、ホールの響きがいまひとつだったので(というよりも、むしろ最近は響きの良いホールが多くなってきたので)、今後そのあたりも考えていかないと、楽団の方向性も難しいのではないかと思いました。いずれにせよ、前日まで吹奏楽の新譜をガンガン聴いた私の耳には、大変心地よいアメリカ最後の夜(?)にふさわしい至極のひとときでした。

>>「第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)」へ続く。

【学科長コラム】 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)

2007年12月17日〜25日まで、東京ミュージック&メディアアーツ尚美 学務学生部から依頼を受けて、アメリカ(ニューヨークとシカゴ)の音楽事情を視察してきました。その中から、シカゴで開催された「ミッドウエスト・クリニック」の様子をレポートにまとめます。
(管弦打楽器学科 科長 伊藤 透)

【もくじ】
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)
→第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

●ミッドウエスト・クリニックの展示ブースでお会いした方々(後編)

■Mr. Johan de Meij (Amstel Music)

かつて「指輪物語」で一世を風靡したヨハン・デ・メイ氏。今回も交響曲第3番「Planet Earth」を片手に、ミッドウエストに乗り込んでいました。数年前に来日したとき一度SHOBI でも公開レッスンをしたことをよく覚えていて、「また来日したら、尚美ウインドオーケストラとぜひ一緒に演奏がしたい」と言ってくださいました。とても気さくでサバサバした性格。私としては大変お付き合いしやすい作曲家の一人です。もっと、分かり易く、かつ気持ち良く演奏できる曲もたくさん書いてほしいな、と思うのは私だけでしょうか…。

■Drum Corps International

○みんなが憧れるDCIのブース
SHOBI はマーチングも大変盛んです。今回マーチングの衣装や小道具、楽器等の展示もたくさんあり、勉強になりました。
DCIは毎年春から夏にかけて、全米のあちらこちらでイベントやコンペが開催しています。ぜひ一度は本番をナマで見てみたいと思っています。

○マーチングユニフォームの展示
格好いい衣装もたくさん展示してありました。ステージマーチングやブラストに繋がるような資料ももらってきました。ディズニーに代表されるように、アメリカはショーの国です。楽器や衣装、選曲や編曲、動きや演出など全てにショーアップが求められます。

■Mr. Jan Van der Roost (De Haske)

おなじみヴァンデルロースト先生。どういうわけか東洋人に大人気で、いつもファンがたくさん。日本にも毎年のように来日してコンサートや録音を精力的に行なっています。SHOBI の特別講師として、毎年6月にバリオホールでクリニックを開催しています。今年も6月8日(日)にバリオホールで、SHOBI の体験入学の一環として広く高校生を中心に参加を募ってバンドを結成し、新曲2曲を公開レッスンしていただく予定です。また、6月10日(火)は学内生のためにご指導いただきます。

■後藤洋先生、広瀬勇人先生

広瀬先生は昨年からSHOBI で専任講師として私と机を並べて仕事しています。先生はSHOBI で作曲を勉強してからボストン音楽院でマスターを取得されました。その後はヴァンデルロースト氏に3年間師事。現在はデ・ハスケ社から多くの吹奏楽曲を出版していて、ミッドウエストにも同社の依頼で駆けつけています。若手のホープとして大いに期待されています(語学力も抜群です!)。先生が作曲された「バベルの塔」は今年のスイスの吹奏楽コンクールの課題曲になっています。

■Illinois State University School of Music

このアメリカ視察と研修の目的の一つに、アメリカの大学や音楽学校の教育事情調査ということがありました。今回はミッドウエスト・クリニックにブース出展している多くの学校とコンタクトできました。これは広瀬勇人先生の協力なくしては実現しなかったことで、SHOBI スタッフとしていろいろなアプローチをしていただきました。
写真は、音楽療法で学位が取れることでも有名なイリノイ州立大学と、指揮者として大変著名なスティーブンK.スティール博士です。博士は、日本でも最近注目度の高いマスランカの交響曲をいくつかCDリリースしています。

 

■MID EUROPE Professor Johann Moesenbicher

ヨハン・ミューゼンビュクラー氏はオーストリアのシュタイアーマルク州シェラートミンク(Schladming)で開催されている「ミッド・ヨーロッパ」の会長です。シェラートミンクは大変風光明媚な観光地ということなのですが、そもそもは炭鉱の町として発展したとのことです。現在ではたくさんのハイキングコースがある国内でも人気のリゾート地です。「ミッド・ヨーロッパ」のバンド・クリニックは避暑地の文化行事の一環として開催されており、町もこれをサポートしているようです。昨年は10回目の開催を記念して「国際指揮者マスタークラス」が2007年7月9日〜13日まで開催され、日本からも指揮者の小林恵子さんが参加し、昨年のバンドジャーナル11月号で報告記事が記載されていました。
この「ミッド・ヨーロッパ」の誕生は、1997年にWASBE (吹奏楽のための世界協会)の国際フェスティバルがシェラートミンクで開催され、大成功を収めたことがきっかけでした。当時WASBEの会長だったW.スパン教授の提案で、「ヨーロッパの吹奏楽の芸術性の向上のための科学的な考察」をコンセプトにこのワークショップがスタートしました。その後、スパン教授から会長を引き継いだミューゼンビュクラー氏はリンツにあるブルックナー音楽院の教授として後進の指導にあたられています。彼の献身的な努力により、ヨーロッパのどこにもない吹奏楽イベントとして発展し、シカゴのミッドウエストにもブースを出し世界に向けてヨーロッパの吹奏楽情報を発信しています。

MID EUROPE

ミッド・ヨーロッパは15の国から約2500名の音楽家が集まって50回ものコンサートを開催します。また、楽器や楽譜を中心に音楽に関係したいろいろな展示もされます。さらに、吹奏楽に関するワークショップも盛んに行なわれ、Youth Wind EnsemblesのためのCISM国際大会も開催されます。

■濟州國際管樂祭組織委員會 副会長Lee Sang-cheol氏

毎年、SHOBI にもLee Sang-cheol氏からご招待をいただいているのに、これまで参加できず失礼している「済州際管楽器組織委員会」(Jeju International Wind Ensemble Festival Organizing Committee)。今回は残念ながらLee Sang-cheol氏は病気療養中のため、ミッドウエストには参加できず、事務局の女性の方が一人でブースを取り仕切っていました。

「済州島国際管楽器組織委員会」は、韓国済州(チェジュ)島で、国際的な吹奏楽フェスティバルとプロフェッショナルレベルの管楽器コンテストを開催している組織団体です。
奇数年には吹奏楽フェスティバルを開催し、世界中から素晴らしいバンドが演奏を披露しています。演奏技術の向上と、お互いの国々の友好文化交流の場となっています。一方、偶数年にはプロレベルの金管楽器と金管アンサンブルのコンテストが開催されています。2006年にバストロンボーン奏者の黒金寛行さん(東京芸大4年、N響アカデミー)が、独奏部門でグランプリに輝き、日本でも一気に注目を集めるようになりました。
ちなみに今年は遇数年なので、下記のようにコンテストが開催される予定です。日本からとても近い場所です。北海道や沖縄で開催されるコンクール感覚で沢山の人にチャレンジほしいと思います。審査は全て公開です。

【期間】8月10日(日)〜8月20日(水)
【独奏部門】トランペット、ホーン、トロンボーン、バストロンボーン、ユーフォニアム、テューバ
【アンサンブル部門】ブラスクィンテット
なお、詳細に関しては下記のホームページを参照してください。
http://jiwef.org/english/competition/sub_01.php

<日本の団体も、もっと世界へ…>

今回、ミッドウエストにヨーロッパや、韓国の音楽祭が広報のためにブースを出し、そのアピールに務めていたのは素晴らしいことだと感じました。日本にもこれらに引けを取らない組織や活動団体が沢山あるのに、世界の場に出てこないのは大変残念に感じます。言葉の問題が大きいとは思いますが、最近日本でも優秀な学生が海外に留学し、戻ってきています。そのような人たちの力も借りて、世界に向けて日本の情報を発信してほしいと思いました。

■Mr. Ray E. Cramer

クレーマー氏は2006年の60回大会に、武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブルを引きつれ自ら指揮して2回のコンサートを成功させています。武蔵野音楽大学はもともとアメリカとの関係を大事にしていて、指揮者にもアメリカの著名なバンドディレクターを客演教授として招聘しています。そこではアメリカの科学的で効率的な指導法をはじめ、吹奏楽作品やバンドテキスト等も紹介され、日本の吹奏楽の向上に大きく寄与してきました。また、そこで教えを受けた卒業生が日本各地へ教育者や指導者として赴き、今日のような日本の学校吹奏楽の隆盛を作っています。

武蔵野音楽大学は1995年に初めてミッドウエストに出演し、2006年の出演で2回目の出演となりました。客員教授のレイ・クレーマー教授の他に、ゲストコンダクターとして同じく客員教授のケネス・ブルームクェスト教授、ラッセル・コールマン教授、ドン・ウィルコックス教授の豪華指揮者陣に加え、ソリストには、シカゴ交響楽団首席トランペット奏者のクリストファー・マーティン氏を迎えての公演でした。今後もこれに続いて、日本バンドの積極的な参加が期待されます。
なお、ミシガン州立大学ウインド・シンフォニーの演奏では、偶然にもイリノイ大学のバンド(次頁で説明)がオープニングで演奏した、FRANK TICHELI の新作「Wild Nights!(2007)」がプログラムに取り上げられていました。FRANK TICHELIはミシガン大学で博士号を取得し、テキサスにあるサンアントニオ大学の助教授を経て、現在は南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校で作曲科の教授をしています。

<ちょっとブレークタイム>小澤俊朗先生
会場から徒歩3分のところにある、東洋風(?)レストラン。ここで昼食を食べているといろいろな日本人の方とお会いできます。小澤俊朗 先生は、尚美ウインドオーケストラ指揮者として15年前にバンドを引き連れてミッドウエストに遠征したときの指揮者の一人。今回は日本バンドクリニック委 員会の代表として参加されておられます。

>>「第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)」へ続く。

【学科長コラム】 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)

2007年12月17日〜25日まで、東京ミュージック&メディアアーツ尚美 学務学生部から依頼を受けて、アメリカ(ニューヨークとシカゴ)の音楽事情を視察してきました。その中から、シカゴで開催された「ミッドウエスト・クリニック」の様子をレポートにまとめます。
(管弦打楽器学科 科長 伊藤 透)

【もくじ】
→ 第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(1)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(3)
・第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(4)

●シカゴってどんなところ?

シカゴ(英語:Chicago)はアメリカ合衆国イリノイ州の大都市で、ミシガン湖の南西岸に位置しています。日本で言うと北海道函館市と同じ緯度です。人口はニューヨーク、ロサンゼルスに次いで3番目、経済・金融面ではアメリカ第二の規模を持ち、北米を代表する世界都市です。
2016年夏季オリンピックの開催都市に立候補して東京都と競っていますが、大阪市とは姉妹都市の関係にあります。2つのプロ野球チーム(カブス、ホワイトソックス)があり、今春よりカブス入りする福留孝介選手を歓迎するポスターもありました。

今年のシカゴは少し雪が積もっていましたが、それほど寒くはありませんでした。街の真ん中にシカゴ川が流れていて、ミシガン湖(写真手前)に注いでいます。私の宿泊したシェラトンホテルもこの川沿いにありました。正面にMBCビルがそびえ、その隣には有名な新聞社、シカゴ・トリビューンの本社ビルがあります。後ろに見える橋はメイン通りの一つ、ミシガン・アベニューにかかる橋なのですが、船が通るときには両脇に跳ね上がり、道路はたちまち大渋滞となってしまいます。川の左側が旧市街で、右側は近代的なビルがたくさん立ち並び、郊外の住宅街へとつながっています。

●ミッドウエスト・クリニックってどんなところ?

このイベントは、毎年12月中旬シカゴ市内のシカゴ・ヒルトン・ホテルで開催され、昨年で61回を数える世界で最も有名で歴史ある音楽イベントの一つです。世界各国から約2万人もの参加者があると言われています。米国をはじめ世界各国の吹奏楽団、オーケストラ、ジャズ・バンドの演奏が聴けるだけでなく、世界でも一流の指揮者、指導者、演奏家による演奏法・指導法のクリニック等もたくさん開催されます。また、350を超える音楽企業のブース出展などもあり、音楽関係者には見逃せない内容です。今回は残念ながら日本からの参加団体はありませんでしたが、1990年には尚美ウインドオーケストラも出演し好評を博しています。

ミッドウエスト・クリニックの会場であるヒルトン・ホテルには沢山のコンベンションルームがあり、演奏会や講習会、資料展示、プレゼンテーションの場として利用されています。メインの演奏会場であるInternational Ballroomは約2000名も収容できる大会場ですが、いつもたくさんの熱心なバンド関係者であふれています。
今年のメインコンサートはSeries A、Series B の二つプログラムが用意されてあり、クリニック参加申し込み時にそのどちらかを選択できるようになっています。当日、会場受付した際に希望したシリーズのチケットをもらうことができます。

●ミッドウエスト・クリニックの展示ブースでお会いした方々(前編)

■Mr. CLARK McALISTER(カルマス社)

日本でも多くの楽譜を出版しているカルマス社(EDWIN F.KALMUS & Co, INC)の副社長クラーク・マッカリスター氏。彼はマイアミ大学でフェネルから指揮法、リードから作曲を学んだ唯一の学生だったことを大変自慢しています。会社も自宅もマイアミにある関係で、リード家とは家族ぐるみの付き合いで、「リードの息子」と自称しています。彼の仕事は楽譜編集が中心ですが指揮や作曲も手がけ、楽譜の出版もいくつかあります。
またマッカリスター氏は、最近日本の吹奏楽ファンの中でも有名になってきたklavier-recordsの音楽ディレクターの仕事もしています。このクラヴィア社からはアメリカ空軍バンドや度々来日するコーポロン氏の素晴らしい録音がリリースされています。その他、日本では知られていないオリジナル曲も発見できるかもしれません。興味のある方はぜひ下記のホームページにアクセスしてみてください。http://www.klavier-records.com/

<訃報>
実は今回、マッカリスター氏から大変悲しい報告がありました。世界の吹奏楽に多大な影響を残したアルフレッド・リード博士が2005年9月17日に永眠されたのは記憶に新しいところですが、その後元気がなかったマージョリー夫人も、昨年10月に後を追うようにして亡くなられたとのこと。心よりご冥福をお祈りします。

■村上 健 社長(BRAVO MUSIC)

BRAVO MUSIC は、日本のブレーン株式会社がアメリカに設立した現地法人です。今回も村上社長自らブースの陣頭に立ってセールスされていました。SHOBI も毎年、オリタ・ノボッタ先生プロデュースの「スタンダード・ブラス」の録音や、課題曲の解説ビデオ制作などで大変お世話になっています。また、SHOBI のバンド指導の先生方や作曲の先生方の作品もここから多数出版されています。ブースでは日本の優れた作曲家の作品やプロの演奏団体、学校吹奏楽の活動や、さらにはハイレベルな日本のコンクールなどが紹介されており、日本の吹奏楽の窓口として大変ご尽力されていると感じました。

■The United States AIR RORCE BAND

今回もいくつか公務員音楽隊のブースがあり、CDやパンフレットを配布して大いに広報宣伝活動をしていました。ミッドウエストには沢山の大学生や高校生も出演するので、そのメンバーをターゲットに優秀な学生を募集しようという狙いです。エア・フォース・バンドは演奏の素晴らしさは勿論のことですが、毎年いろいろな作曲家に作品を委嘱して世界の吹奏楽のレベルアップとレパートリーの拡大に努めています。最近日本の吹奏楽コンクールで有名になったピ−ター・グレイアムの「ハリスンの夢」などもその一つですが、いずれも演奏グレードが高い事で有名です。

■Southern Music Company

日本でも大変有名なアメリカの楽譜出版社であるサザンミュージック社は楽譜卸売業社としても幅広く営業していて、全世界とのネットワークを構築しつつあります。日本ではミュージックエイト社が強いコネクションを持ち、同社の楽譜をいち早く日本のユーザーに届けています。広いブースでは、マクベス、バーンズなどの大物作曲家たちが世界から来ている吹奏楽ファンに対応していました。

私が高校2年のときに行った、アメリカ・ノースダゴタの「インターナショナル・ミュージック・キャンプ」で、第3週目の指揮者として指導していただいて以来の再会でした。片言の英語でご挨拶しましたが、先生がそのときのことをよく覚えて下さっていたのには大感激。このキャンプでは世界の一流指揮者が講師として来ていて、当時イギリスの海兵隊バンドの指揮者だった、ヴィヴィアン・ダン中佐も指揮しておられました。私の専攻であったユーフォニアムでは、当時アメリカ一の名手と言われた元海兵隊バンドソリストのH.ブラッシュ氏が講師で、貴重なレッスンを受けることが出来ました。
ちなみに、もう一人の日本人高校生はトランペット奏者の関山幸弘氏(NHK交響楽団)です。彼は毎週あるオーディションではいつも一等賞で、当時から高い技術力と抜群の音楽センスは注目の的でした。また、日本人離れしたおおらかなキャラクターは、「YUKKI」の愛称で親しまれ、特に女子高校生には人気抜群でした。
尚、帰国して関山さんに電話でこのことを報告したところ、1982年文化庁派遣在外研修員としてイリノイ州のノースウェスタン大学に留学中、やはりミッドウエストでマクベス氏にお会いしたとのことでした。懐かしい思い出です。

■Mr. James Barnes

J.バーンズ氏とは日本のマネージャーである株式会社エーピーアイ社長の青山均氏に紹介されて15年ほどのお付き合いをさせてもらっています。今回も大変忙しい中、時間を割いて三人で昼食を取りながらお話をすることが出来ました。J.バーンズといえば、誰もが知っている「アルヴァマー序曲」(電子オルガンやマンドリンオーケストラにも編曲されています)や「パガニーニの主題による幻想変奏曲」、大作の「交響曲第2番」で有名です。日本からの委嘱では、陸上自衛隊50周年で作曲した「第5交響曲・フェニックス」、神奈川県立逗子高校の創立80周年記念で作曲した行進曲「YAMAMIDORI」、川崎市教育委員会が委嘱した「March KAWASAKI」などがあります。
バーンズ氏は現在、カンザス大学の作曲科教授としても忙しい日々を送っておられます。底抜けに明るい性格で誰にでもフランクに接してくれます。日本も大好きなようで毎年来日されています。今回エア・フォース・バンドからもらったCDのオープニングはバーンズが2002年に作曲した「Dreamers…」、トリは2006年に作曲した「Wild Blue Yonder」という2曲が録音されていました。今年59歳で作風にも脂がのってきて、今後の新曲や指揮活動がますます楽しみです。

<ちょっとブレークタイム>
楽譜展示ブースで日本マーチングバンド指導者協会前理事長の原田元吉先生と洛南高校吹奏楽部指揮者として活躍された宮本輝紀先生に偶然お会いしました。宮本先生には全日本高等学校吹奏楽大会で、尚美ウインドオーケストラが毎年とてもお世話になっています。(帰国に際し、原田先生とはちょっとした事が起こりました。)

>>「第61回 ミッドウエスト・クリニック に行ってきました。(2)」へ続く。