尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2008年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて

SHOBI講師陣による課題曲講座

 

IV. 天馬の道~吹奏楽のために(片岡寛晶)

天野正道先生・佐藤正人先生・渡辺由美子先生による鼎談

天野―― この曲は日本的な響きがするね。4度・5度の重なりがその雰囲気をつくってる。

渡辺―― 作曲者はとても若い人で打楽器を勉強されている人です。

佐藤―― それで打楽器の指示がとても細かいのですね。では曲を見ていきましょう。 導入はdolce と書かれているセクションが主旋律ですね。休符を挟んでいますが、4小節で1つのフレーズです。装飾音符は拍の前に入れる方法とジャストに入れる方法の2 種類あります。最初の4小節は、テーマの響き、5度のハーモニーをしっかり合わせたいですね。1・2小節目と3・4小節目は対照的になっています。この4 小節を1フレーズで歌うのと、5小節目からは、ユーフォニアムやホルン、それからアルト・クラリネット、ここにdolce とあるので、この人たちは、最初の4小節の響きと歌い方を引き継いで演奏します。

天野―― この5小節目からは2つのラインがあるけど、強弱が変えてあるからそれを判断してバランスの整理をしない雑然とするかな。コンデンス→フルスコアと見ながらどのパートを出していくか、考えて演奏しないと、多彩さが返って雑然として聴こえるかもしれない。バランス取り方で印象変わるね。

佐藤―― [A] のメロディはトロンボーンも含めて歌い方をそろえたいですね。ここの装飾は拍の前に出す。

天野―― そうだね。dolce と書いてあるパートは伴奏型に一見みえるけど、メロディラインの一部だね。音楽は15小節目Piu mossoに向かっていく。ここも各声部のバランスや聴かせ方がポイント。15小節からテンポが4分音符=92… あれ?これ付点4分音符の間違いだね。

佐藤―― あっ、ホントですね。accel. は、13小節目より14小節目ですが、dolce と書いてあるユーフォニアムやサックス、ホルンのパッセージで前進できるようにするとテンポが崩れないかな。13小節目で管楽器の人たちは初めてアクセントが出てくるので印象的に。

天野―― [B] からのleggiero は込み合って見えるけど、mf の主旋律(Trp.等)のライン、mp の木管オブリガードのライン、そして伴奏の3つのラインだね。

佐藤―― 渡辺先生、作曲者のプログラムノートにもありますが、打楽器が非常に重要な役割をしているので演奏のポイントお願いします。

渡辺―― アクセントやテヌート、通常楽譜にはあまりない記号が沢山ついていますね?これは、作曲者が何を意図としているかをよく考えて演奏しないといけません。まず、4・5小節目はティンパニーが大事です。ウインドチャイムは、トライアングルの音と重ならないように、少し下から上に演奏します。

佐藤―― 余韻が、短くなるわけですね?

渡辺―― そうですね。13・14小節目のドラとグロッケンにテヌートがありますが、輪郭を少し見せたいということと、音の響きをしっかり深く出そうという意図ですね。ここのサスペンド・シンバルにも、1度目はクレッシェンドなし、2回目はクレッシェンドありと こだわりがあります。

天野―― 15小節目から、指定のテンポは92だけれど、[B] からは打楽器のビートにのって弾む感じというか、少し音楽が進む感じかな。

佐藤―― そうですね。15小節目は慌てないようにして、クラリネットとサックスの人たちは付点8分と16分音符を弾むように。同じ形で、ホルンとサックスが追っかけられるように吹く。

天野―― [B] からはトランペットと木管にもleggiero が書いてあるけど、これは軽さを持って演奏するっていうことだね。主旋律はトランペット、ホルン、サクソフォーンで、木管の人たちは、それのオブリガード。

佐藤―― 伴奏型のように見える低音もフレーズ感必要かな。スラーのところと休符のところ、スラーがかかってないけど、全部弾まない方がいいですね。木管もアーテュキレーションが変わっている後半の方をクリアに吹かないと埋もれてしまいそう。ホルンとトロンボーンの18小節目のアクセント、その前のテヌートやアクセント、そしてアクセント・スタッカートを吹き分けるのが大事かな。

天野―― はじめに言ったけど、たくさん指示があるから、スコアを見て全体を整理しないとだめだなぁ。

佐藤―― [C] は、アクセント・スタッカートだけどハーモニーを響かせる。低音の動きも大事です。打楽器、スネアドラムは、低音と動き合わせて。

渡辺―― 29小節目のシンバルはソロなのでしっかり演奏します。

佐藤―― [D] へのクレッシェンドの4分音符・8分音符・トランペットの16分音符は、分けて練習したほうがいいかな。テンポの変わり目が難しいです。

天野―― そうだね。付点4分音符=92 → 4分音符=120の速さだと、12/8と4/4で8分音符のビート感の違いが微妙だからなぁ。指揮も注意ですね。 [D] からはメロディの性格づけが大事かな。最初の木管のフガートの動きと、38小節目からのユーフォ・ホルン・3番クラ・アルトクラ・ファゴットの動きの違い。(スラーの付き方に注意)

佐藤―― そうですね。[D] の木管はleggiero のイメージで。38小節目からの中音域の旋律はレガートを生かして。でも全部レガートじゃないのでアーティキュレーションをクリアに。

渡辺―― [E] は管楽器の人と打楽器の人のアンサンブルが非常に重要なので、きちんとかみ合うようにセクションを越えたアンサンブルを意識して。サスペンド・シンバルを含めて打楽器に移動や持ち替えがありますが、セッティングやタイミングに気をつけて。[E] 1小節前のS.D.とシロフォンの16分音符はクレッシェンドがかかっていますが、テンポは慌てずに、急がないように。 [E] ジャストの小太鼓のfp < は、ベースラインとニュアンスをそろえて。次のティンパニーも同じですね。ヴィブラスラップは、はっきり音が抜けるように。ドラはmp となっていますが、輪郭が見えるようにたたきます。

佐藤―― 44小節は5度の響きがきちんと出るように8分音符のアクセントを吹く。45小節目は8分音符の2つ目が転ばないように。

天野―― [F] からテンポは少し落ち着いてやらないと吹くのが大変かな。テンポの切り替え、4分音符=132だからaccel. は計算して速くなりすぎないようにしないと。メロディは3拍子を超えたフレージングだね。

佐藤―― ここクラリネット・サクソフォーンのフレージング、難しい。吹きにくいなぁ。Allegro con energico とあるけど、速さじゃなくて音楽に勢いが必要だ、ということで。ここが指定のテンポより速くなってしまうと慌ただしく聞こえるので、テンポの中で落ち着いて演奏したい。伴奏系はあまりスタッカートとかマルカートになりすぎないよう、ハーモニー感を出しながら演奏したいですね。56・57小節目は印象的です。

天野―― [G] からバランス難しいなぁ。

佐藤―― トロンボーンが大きくならないように。そしてホルンやユーフォあたりのメロディと木管のバランス気をつけないと。ほんとにラインがたくさんあるのでスコアは必修です。83・84小節目ベルトーンは、2拍目を意識してハーモニー感を出す。dim. だからといってあまり最初のベルトーンで小さくなりすぎないように。

天野―― [ I ] の部分は、Adagio って書いてあるけれども、テンポは遅すぎないように、音楽は流れるように。…あれ?テンポは80か。Andante の感じだけど。

佐藤―― 低音は伴奏のようにみえますが、dolce と書いてあるので対旋律のつもりで。ホルンはメゾスタッカートなので、音は独立させて、でも切り過ぎないように。ベタベタ長いのもだめだな。木管のメロディは16分音符が転ばないようにして歌います。最初の音、少し長めで丁寧に。8小節のフレーズなので、途中の休符で音楽が止まらないように。これはこの曲全体にいえるポイントですね。

天野―― [J] のフルートのソロのところ、ゆったりしてるけれども、後の方が間延びしないように。ハーモニーバランスも注意。ホルン重要だな。

渡辺―― トライアングルは96・97小節目で倍音をしっかり出して。

佐藤―― この辺は、管楽器奏者同士で打ち合わせをしてフレーズが切れないように。特にチューバとか絶対に音は切れないようにしたいですね。

渡辺―― [K] のところは非常に美しい部分ですけれども、グロッケンのマレットは響きがしっかり出るものを使って、歌をうたっているように演奏できるといいですね。

佐藤―― 103・104小節目のクレッシェンド、ディミヌエンドは頂点を感じて、山が合うように。サクソフォーンのソロは余韻を楽しんで。実際ここは作曲当初、もう少し寸法が長かったそうですが…。

天野―― [L] から最後までは前半の速い部分の再現。尺が短く再現されているので、その分、緊張感を持って。それから、前半より音の並びが変わっているところを意識して、狙って演奏したいね。

佐藤―― [M] のところは少しやわらかく。クレッシェンドの方をしっかり。  [N] は後半の方を出す感じで。ここもフレーズも切れないように。Timp.もかっこいいですね。

天野―― 結構最後まで吹くのは大変だなぁ。 …で、注目のトランペット、トロンボーンのベルアップのところ、正人先生ならどうする?唾が戻ってくるような角度じゃないほうがいいんじゃないかな(笑)

佐藤―― タイミングは8分音符を吹いて、8分休符をしっかり休んで2拍目にアップですね。角度はトランペットとトロンボーンの1stに角度を合わせて。あまり上げても「?」ですね。Grandioso からAllegro に戻ったところは打楽器もすごく華やかですが、渡辺先生、バランスで気をつけることは…?

渡辺―― Grandioso は、まず頭の大太鼓の8分音符をしっかり。Allegro のfp は、管楽器に合わせて少し長めにf を出してからp に落として。3/4になってから、クレッシェンドをかけますけれども、走って転ぶようなことにならないように決めたいですね。バランス的には、サスペンド・シンバルがリズム隊を追い越さないように。ドラからシロフォンに移動するのが、とても難しいです。セッティングの工夫も必要ですが、ドラを演奏→シロフォンのマレットに持ち替える→ドラを止める→シロフォンに移動する とやると、効率がいいと思います。

佐藤―― ありがとうございました。