尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2012年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて

SHOBI講師陣による課題曲講座

 

IV. 行進曲「希望の空」(和田 信)

天野正道先生・佐藤正人先生・渡辺由美子先生による鼎談

佐藤―― では課題曲4番を見ていきましょう。

天野―― マーチの形式でセオリー通りしっかりしている。わかりやすい作品だね。王道を行く曲だ。

佐藤―― 作品として完成度が高いです。課題曲としてだけでなく、いつでも演奏される行進曲になるかも。

渡辺―― 打楽器も問題ないです。Timp.3台で出来ますね。最初のグロッケンのトリルはLから。

佐藤―― S.D.はどうですか?

渡辺―― 6/8拍子で基礎練習をすると良いです。手順もいろいろ工夫して練習すると効果がある。

天野―― ホルンもそうだね。伴奏のバッキングの吹きかた、最近はあまりやりなれてないでしょう。

佐藤―― 練習の時は3拍目と6拍目を大きめにして練習すると良いです。少し前目で。リズムは特にタイの後が大事です。伸びすぎないように。あとは音を押さないように。

天野―― オーケストレーションも良いし、小編成にも対応している。演奏するバンドたくさんあるね。

佐藤―― 序奏はファンファーレが印象的。速度は付点四分音符=116ca.ですね。

天野―― この捉え方によって様々な解釈が可能。

佐藤―― 全体の印象や難易度に影響しますね。自分たちが一番自然に演奏できる速さがベストです。時間制限のために表現が犠牲にならないように。

天野―― めちゃくちゃ速くやって、自由曲に時間とるバンドもあるからね。(一同うなずく)

渡辺―― 管楽器と打楽器との一体感も大切です。打楽器は「後ろの指揮者」といわれるくらい重要。

天野―― 全体に表情記号等は最小限しか記されていない部分が多く、演奏者に任されている。

佐藤―― 導入部の掛け合いのラインは、思いきって演奏したいです。楽器だけでなく、歌や息を使っての練習で音のスピードを揃えることも必要かな。短い音のハーモニー感を出すためにテンポを落として音の響きを確認するのも良いです。ダイナミクスは、f ですが、4小節目に向かって演奏。

渡辺―― ここの打楽器のタイミングやバランスも重要ですね。

天野―― そうだね。[A] からの第1マーチ、とても親しみやすい。

佐藤―― 歌うことは大事ですね。marc. であっても、音が短くならないように。16分音符やタイの後の音符が転んだりしやすいので、常に伴奏に乗って演奏できるように。

天野―― 伴奏形はマーチの基本中の基本。ホルンは少し前目に、遅れて聴こえないように演奏。ベースラインも音の長さでビート感が変わるので統一。

佐藤―― 4小節+8小節のフレーズも意識します。旋律は、タイやスラーをはずして練習すると良いです。少し弾む感じをつかめると良いかな。後半はフルートが加わります。オクターブ上のラインが印象的に聴こえるようにしたいですね。

天野―― [B] からは第1マーチの繰り返し。ダイナミクスが変化。対旋律や主旋律に新しい楽器が加わる。

佐藤―― 対旋律は聴かせどころです。うまくバランスも取りたい。木管とTrp.のように楽器の組み合わせによって旋律の音の処理や長さが変わらないことも大事。伴奏は11、12、19、20小節、27、28、33~36小節に向っていく感じで演奏すると節目が決まると思います。

天野―― [C] からは、第2マーチ。力強い主題と美しい木管の旋律。

佐藤―― 主題は勢いも大事だけど旋律らしく、節を感じて吹くことと、伴奏のハーモニー感が大切。

渡辺―― 主題と伴奏、ベースライン、打楽器はテンポ感を合わせたいですね。

佐藤―― 大事ですね。後半のmp は木管の入りを飛び込まないように、丁寧に演奏。

天野―― [D] は第2マーチの繰り返し。

佐藤―― 高音木管にオブリガートや合いの手のTrp.が印象的。この2つのラインは、思い切って演奏。

天野―― 65小節~聴かせどころ。前奏のモティーフが再現されて、第1マーチが戻ってくる。

佐藤―― まるでスーザのマーチみたいですね。(一同うなずく) ここも主旋律、対旋律、伴奏、それぞれのラインをしっかり合わせてトリオに向けて盛り上げたいです。最後の4小節は前半の頂点。

天野―― おっ、トリオからは、伴奏形が拍頭だけだ。

佐藤―― Trb.と低音はバランスとハーモニー感、それと旋律とのテンポ感を合わせることが大事。ここの♪のテヌートは息をしっかり入れてクリアに発音しないと和音響かないかも。休符もビート感がなくならないように、メトロノームや打楽器等でテンポをキープしながら練習すると良いです。

渡辺―― ここは打楽器も粒を揃えるのは結構神経使います。

佐藤―― [G] からはとても美しい旋律。弱奏でも表情出したいですね。常にテンポと伴奏を意識して、音楽の流れが停滞しないように。どこに向かって歌うか、重心はどこかを考えて表現したいです。[H] からは、伴奏形にビート感が戻ります。

天野―― 雰囲気が変わるね。[ I ] のファンファーレや中低音は、付点のリズムのクオリティほしい。

佐藤―― バンドの機動力の最大の見せ場ですね。124と128小節は「間」(休符)の緊張感も大事。

渡辺―― [J] に向けての打楽器もリズム、アクセントに注目して思い切って表現したいです。

天野―― 前奏のモティーフを挟んで rit. しないで一気に、[J] からグランディオーソ。盛り上がるね。

佐藤―― 前半と後半のテンポ感は統一したいです。

天野―― そうだね、ほんの少し速めるのもありか。でもそのまま入る方が良いね。

佐藤―― はい、私もそう思います。トリオの旋律が再現されますが、音は保ったままクリアに発音。[J] はまだ f なのでその分余裕をもって。主旋律、対旋律、オブリガート、それぞれのラインが立体的に聴こえるように吹き方を揃えたいです

渡辺―― 146小節はアクセントを生かし、続くクレシェンドは打楽器も積極的に演奏したいです。

佐藤―― 高音木管オブリガートはコンサートならスタンドプレイでしょうか。

天野―― そうだね。コンクールでもやっていいんじゃない?前、スタンドプレイしていたよね?

佐藤―― はい、そうでした。[K] からは ff になり、エンディングに向かってクライマックス。

渡辺―― 155,156小節の打楽器も印象的です。

佐藤―― [L] に一瞬現れる mf の部分は思い切って表現したいです。

渡辺―― 強弱の変化があっても速度の安定感は大事ですね。

佐藤―― そうですね。そここから mp f ff とダイナミクスが変化しますが、管楽器の発音や打楽器のニュアンスの変化も生かして多彩に。 着地の8分音符まで安定感が欲しい。アクセントはないので丁寧に演奏。

渡辺―― 打楽器もずっと同じ音量ではなく、表情ほしいです。

天野―― 部分的にアクセントをつけて「ドン、シャーン」ってやったりとかね(笑)

佐藤―― 打楽器のアクセントで演奏に色付けするのもアイディアですね。

渡辺―― 最後の4小節は決め所なので思い切っていきます。ただ音色は崩れないようにしたいです。

天野―― 参考に8分の6拍子のマーチ聴くと良いね。「エル・キャピタン」ちゃんと練習する、みたいな。

佐藤―― 「キング・コットン」や「ワシントン・ポスト」もいいです。かつての課題曲なら「五月の風」(真島俊夫 作曲/1997年度) や「輝く銀嶺」(齋藤高順 作曲/1971年度)。

天野―― ああ、そっちのほうがいいか。「輝く銀嶺」はみんな知らないんじゃないか。でも今年は良くできている作品が多いね。

佐藤―― はい、作曲者は、演奏者や曲を聴く人に元気や勇気を少しでも持つことが出来るような曲にしたいと言っています。おそらくこの曲はたくさん演奏されると思います。