尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2014年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のすべて

SHOBI 講師陣による課題曲講座

 

V. きみは林檎の樹を植える (谷地村 博人)

天野正道先生・佐藤正人先生・渡辺由美子先生による鼎談

佐藤:今年の5番は、時間的には長めですね。木管楽器が少し、アンサンブルやテクニック的に難しい部分がありますが、金管・打楽器は比較的難しくないかも知れません。良い響きがしそうな作品。

天野:そうだね。スコアが図形的にも美しい! 現代曲において大切なことです。頭脳派というか、非常に知的な印象。選んでいる音も汚くないので、響きが良いはず。

佐藤:良く考えて作られています。響きを意識しているので、練習や本番の音響に影響受けますね。

天野:フラッターやハーモニクス、微分音もあるね。

佐藤:偶然生まれる響きも狙っているようです。自発的に揺らぎ、というかズレを生み出すのは、まさにコンクール的にいう演奏の安定感、ではない部分が奏者にゆだねられているので、結構これまでの課題曲とは異なるアプローチが必要ですね。アンサンブル力も違った意味で重要です。

天野:これはこのようなスタイルの音楽に触れる機会や演奏した経験も表現の幅を広げるために大事。

渡辺:ハーモニー(響き)も美しいですね。鍵盤の使い方もまさに響き・音響的です。独立した動きも多くて、マレットや弓を使った持続音、l.v.の響きの長さ、セクションも管楽器とのアンサンブルでもスコアから考えて演奏しないと。鍵盤楽器や小物が演奏の色彩感に大きく影響します。

佐藤:曲は、結構インパクト強く開始されますが、そこから響きが生まれる印象です。奏者の人数やバランスも音色の変化の上で重要ですね。

渡辺:同じ動きの管楽器の人と合わせる、楽器の組み合わせは、たくさんのセクションにあります。

佐藤:管楽器と鍵盤打楽器のアンサンブルの仕上がりは、この曲では、非常に大事になってきますね。

天野:そうだね。全体のフィギレーション、ヘテロフォニー的な部分もとても面白い。音のぶつかりも。

佐藤:はい、作曲者は意図を注釈に記しています。この木管のアンサンブルは確実に練習して、効果を出せるといいですね。ダイナミクスの変化もタイミング大事です。

天野:うん、音量の頂点や弱奏の設定、cresc. dim.のカーブを揃えるために、各セクションの位置をスコアで確認して、立体的に聴こえるようにしたいね。

佐藤:音の出だしと終わり、スタートや動きを引き継ぐパートの音量設定とcresc. dim.は音の重なりが多くなるほど重要になってきます。

天野:テンポ感、拍子感で進行していく曲ではないので、演奏者次第で、かなり違う響きがすると思う。アンサンブル的に縦横が合う以上に、緻密さが要求される。音のぶつかりも音色が大事。指揮者の意図が反映された演奏は、聴くとすぐ分かるね。コンクールでは審査する人の力も試される。

佐藤:確かに。木管の騒音→ざわめき、とある部分や管楽器の刻みは、遠近法的な響き(空間)の観点でとらえたいです。指揮者、演奏者の個性が際立ちますね。

天野:Antique Cymbalsは、学校にあるかな?

渡辺:クロテイルで演奏してもよいと思いますが。

渡辺:Antique Cymbs.、Maracas、Triangle、Tambourineに至る小物楽器まで奏法や音色にもこだわりを持って書かれています。

天野:そうだね。[B]以降に出てくるflatt.や微分音、弱奏で効果的に演奏するのが少し難しいかな。

渡辺:打楽器も、たとえば、Vib.は22小節目あたり、管の動きにリンクしているようで、独立したアーティキュレーションです。点線のタイ、ストロークや打ち直し、響かせ方など考えて書いてあります。

佐藤:fffの響きや音量は部分で色が変わるように表現したいですね。

天野:譜面上だけでなくリハーサルで作っていく楽しみもあるね。曲の部分で変化していく色合いや響きのコントラストが欲しい。[C]はよく鳴るだけでなく各声部が聴こえるように演奏したい。

佐藤:響きのグループや刻み、騒音? 同じ動きの楽器どうしで(セクションを超えて)一緒に練習するとお互いに響きやバランスを確認できますね。

渡辺:管楽器とアンサンブルを仕上げるうえで、打楽器も一緒に練習すると良いです。Timp.のGliss. H→Ais、音程感しっかり確認したいです。

佐藤:風鈴も登場しますね。

渡辺:風鈴の種類や音程。音色にもこだわりたいです。色々な種類試したいですね。

佐藤:以前の課題曲で用いた楽器? また活躍しますね。南部風鈴!

渡辺:はい、あの時は沢山用意しました!(笑)

天野:練習番号[D]のsenza Tempo(Perc.)なのに①~の意味は?

佐藤:これは管楽器の小節線のことですか? 指揮者が指示を出すと分かるのでは、パート譜は?

渡辺:同じです。

天野:少々混乱するかな。

佐藤:crescendo、decrescendoや長い音、刻みの音のダイナミクス、変化させるタイミングも大事です。音色も楽器の組み合わせでコントラストになっている。

佐藤:[E]はバランスが重要ですね。笙のような響きになるかな。木管・金管、Vib.(arco)のような鍵盤打楽器の音量の特性や音色を生かすバランスを工夫しないと。ここは結構計算して演奏する必要がありますね。

天野:そうだね、音響的な色彩感の変化の上では時間的なタイミングや幅の変化はポイント。発音の仕方や種類も大事になってくる。

佐藤:実際の演奏で聴くとどうですかね?

天野:ホールで聴くとスコアからの印象と違うかもしれないな。聴くなら響くホールがいいなあ。

渡辺:そうですね、速度の設定でも聴いた印象は変わってきますね。

佐藤:はい、でもある程度一定ではなく、変化があっても良いと思います。

天野:もちろん。部分のコントラストや時間的な変化は是非欲しい。最後の終わり方もとても美しい。

佐藤:響きが空間に広がる感じ、というか昇っていくイメージです。余韻もかなり印象深い。時間の制約を気にしないで楽しみたいです。

渡辺:風鈴の消えるまでの印象も大事です。

天野:長く楽しみたいけど自由曲の時間が…。

渡辺:そこが少し残念です。

佐藤:そうですね。この曲全体には、練習で、同じ動きのグループや楽器同士で(刻み、騒音的な動きも)セクションを超えて一緒に練習して、お互いの動きやバランスを確認することが大事です。

渡辺:はい、管楽器とアンサンブルを仕上げるうえでは、打楽器も一緒に練習すると良いです。

佐藤:色々な楽器配置で練習してお互いの動きを聴きあうこともお勧めです。

天野:金管と木管が隣とか、低音と高音木管や打楽器とか、前後逆とか?

渡辺:良い方法ですね。他の曲でも応用できます。

天野:その動きが揃うことで、全体の色彩感や響きが出来上がってくる。散文的に見えるパート譜からスコアで自分の役割を確認して全体像をイメージして練習したいね。

佐藤:同じ動きのセクションを確認して合わせる練習を緻密に重ねていくことですね。先生方、ありがとうございました。


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