尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

2018年度 課題曲のすべて メニュー

課題曲のすべて

I. 古き森の戦記(塩見 康史)
<課題曲1>ファゴット編

パート別ワンポイントアドバイス(ファゴット編/講師・多田逸左久)

多田逸左久吹奏楽を愛する皆さん、楽しく楽器を吹いていますか?
さて、今日はコンクール課題曲を演奏するに当たり、ポイントになる点を、皆さんと共に考えてみたいと思います。まず、どの曲にも共通する基本方針を確認しておきましょう。

(1)楽譜を忠実に演奏する

「そんなの当たり前!」と思うかも知れませんが、自分ではそうしているつもりでも、実はできていないということが意外に多いものです。その上、作曲家は、自身で表現したいことの全てを譜面に書き表している訳ではないので、せめて書き記されていることは100%リアライズするのが、私たち演奏者の務めであると考えます。常に初心を忘れず、楽譜に忠実な演奏を心がけましょう!
言うまでもありませんが、"楽譜を忠実に演奏する"ためには、"楽譜を正しく読む"ことが前提となります。楽譜を"ドレミ"で、声を出して読んでみましょう!

(2)表現を大切にする

楽譜を忠実に演奏しただけではまだ十分とは言えません。それに加えて、というよりは、むしろそれと同じくらいに大切なことがあります。
それは、皆さんが「目の前の曲をどのように演奏したいか」という"気持ち"です。その上で、その気持ちを表すにはどうしたら良いかを考え、その通りに演奏できるよう練習することが大切です。そこで、楽譜を"ドレミ"で読む際は、fは大きい声で、pは小さい声で、クレッシェンドはだんだん声を大きく、スタッカートは短く、アクセントは強調して、というように表情を付けて読むようにしましょう!そうすると、自分の気持ちがよりリアルになり、演奏に生きるようになります。楽譜を忠実に演奏しながら、最大限自分なり、自分たちなりの表現をすることが音楽の難しいところであり、そして最も楽しいところでもあります。

(3)スコア(総譜)を見る

吹奏楽はひとりではできません。ただ自分の気持ちを表現するだけでは、うまくいかないときがあります。そんなとき、皆さんの気持ちをひとつにするためのアイテムに、"スコア"があります。スコアを見れば、自分が全体の中でどんな役割を受け持っているのか、自分は誰と同じことをしているのかを簡単に確認することができます。ですから、パートリーダーだけが見るのではなく、皆さんそれぞれが見て有効活用してください。

(4)参考演奏CDについて

参考演奏CDが全日本吹奏楽連盟からも出ていますが、使用にあたっては注意が必要です。皆さんは、楽譜を忠実に演奏しながら、自分たちらしい演奏を目指しているわけですから、そのために役立つような聴き方をしなければいけません。
参考演奏を聴いて先入観を持ち、それが皆さんの個性的表現を妨げ、いわゆる"模倣"にならないように十分気をつけてください。そういう意味では、参考演奏CDを聴かないのも、ひとつの選択肢であると考えます。

以上が、各曲に共通する基本方針です。作曲家のコメントも参考にしながら、自由にイメージを展開してください!

次にそれぞれの曲について、演奏上のポイントを考えてみましょう。Bsn.だけに適用される点と、他のセクションとも関係する点をおりまぜながらあげていきますが、ページの都合で、すべてはカバーしきれませんので、自分たちで臨機応変、補うようにしてください。
原則として、B.Cl.、T.Sax.、Bar.Sax.、Trb.、Euph.、Tuba、St.Bassとは、指摘がなくとも連係することを前提に進めていきますが、それ以外の楽器とも、動きが同じであれば、シンクロナイズすることは言うまでもありません。また、音程についても、原則的として皆さんで修正することとします。特に、完全音程(1度・4度・5度・8度...)は、うならないようにしましょう!!

古き森の戦記

・冒頭〜
Adagio misteriosoと書かれています。Adagio(アダージョ)は、一般的に「ゆっくりと、静かに」という意味で使われていますが、それに加えて「気を付けて進む」という意味合いがあるそうです。また、misterioso(ミステリオーソ)は、「神秘的な、不思議な、極秘の、意味ありげな」という意味です。このセクションで、ファゴットは長い音符を受け持っていますが、「ゆっくり、気を付けて進みながら、神秘的で意味ありげな」雰囲気を出すにはどうしたらよいでしょう?一つの提案ですが、じっくり押し出すような方向性のある息で、ヴィブラートを効果的に使ってみてください。また、3小節目のmp、5小節目のpは、柔らかいアタック(ドゥやズゥ)で発音しましょう。

・[A]〜
Allegro energicoと書かれています。allegro(陽気に、快活に)energico(力強く、エネルギッシュに)で演奏します。明瞭なアタック(ト・テ・トゥ)を音量によって使い分けながら、息を途切れなく送り出すように吹いてみてください。

・[C]〜
marcato(マルカート/はっきりと)で、表示されている記号をそれぞれ一段階上げるつもりで演奏しましょう!

・37小節目
八分音符のスタッカートを、コントラバスにならって、ピツィカートのように吹きます。勢いのある息で、トン・トン・トン・トンと言うように発音してみてください。 soloとは書いてはありませんが、soloのつもりで吹きましょう!

・[E]〜
タイでつながれた音符の音価を守ってください。八分休符を大切に扱いましょう!

・65小節〜
【譜例1】のように吹いてみてください。

【譜例1】
bsn1_1.png

・[H]〜
leggero(レッジェーロ/軽快に)で吹き進めましょう! "基本的"に、このような音形は、トッ・トゥ・トッ・トゥ・トッ・トゥ・トッ・トゥという発音で吹いてみてください。

この曲のファゴットは"オプション" ではありませんが、残念ながらソロは任されていません。しかし、「ファゴットここにあり」と言う気持ちで、積極的に演奏してください。

まとめ

『始めに気持ちありき』
一番大切なものは皆さんがどう演奏したいかという"気持ち"です。「その気持ちを表すにはどうしたらよいか?」ということから、すべてが始まります。どんな音が必要で、その昔を出すにはどう練習したら良いか?つまり"テクニック"も、気持ちを表すために必要だということです。

『表現は大げさに』
自分ではそう吹いているつもりでも、人にはそう聞こえていない事がよくあります。表現はより大げさに、自分で思っている10倍くらいするようにして、やっと人に伝わると思ってください。

『そして世界に一つしかない演奏を』
楽譜に書いてあることを忠実に再現し、書き切れていないことを探り出しながら、自分なり、自分たちなりの気持ちを最大限乗せて演奏し、それをどれだけ聴いている人に伝えるか?ここが音楽の難しいところであり、同時に楽しいところです。こうして、様々な試行錯誤を経て『表情豊かな独創的な演奏』が生まれます。今年も、世界に一つしかない、皆さんだけの演奏を目指してください。期待しています!!

最後に、もう一つだけ付け加えたい事があります。私が音楽学校に入って間もない頃、恩師である故三田平八郎先生が我々学生にこうおっしゃいました。『君たち、ファゴットは聴こえてなんぼなんだよ!』つまり、ファゴットを吹く以上聴こえさせなければいけないと言う事です。今でも私の心のよりどころです。この言葉を、吹奏楽はもとより、ファゴットを吹く全ての皆さんにお送りして、本文を閉じたいと思います。

【多田逸左久プロフィール】
1959年東京生まれ。東京都立竹早高等学校在学中に、菅原眸氏の手解きでファゴットを始める。1978年東京藝術大学入学。ファゴットを故三田平八郎氏に、室内楽を故アンリエット・ピュイグ=ロジェ、故吉田雅夫、中川良平の各氏に師事。1982年同大学卒業、引続き同大学大学院入学。故フリッツ・ヘンカー、岡崎耕治の両氏に師事。1984年同大学院修了。同年渡独、ハンブルク、フライブルクを始め、各地で遊学する。1989年の帰国以来、フリーランサーとして様々なジャンルで音楽活動を展開する傍ら、1993年より日本ファゴット(バスーン)協会事務局の一員として、ファゴットの普及活動にも携わっている。 また、1994年には東京シンフォニエッタの設立に参加し、現代音楽にも積極的に取り組んでいる。現在、日本ファゴット(バスーン)協会事務局長、一般社団法人東京シンフォニエッタ理事。

2018年度 課題曲のすべて メニュー


ページトップ