尚美ミュージックカレッジ専門学校 管弦打楽器学科
管弦打楽器学科[2年制]
音楽総合アカデミー学科管弦打楽器コース[4年制]

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課題曲のすべて

III.行進曲「春」(福島 弘和)
<課題曲3>天野正道&大井剛史 両氏による対談

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天野:さすが福島さん、素晴らしい!私はもうべた褒めです。まずは、やっとちゃんとした2拍子のマーチを書いてくれたと思います。ただ、難しいですよね、いい曲だけに。

大井:テンポが難しいですね。そして最初の付点のリズムです。

天野:これはバンドによって個性出ますね。いくつかの団体で、拍頭の音を凄く短く演奏してるとこもありました。私はそうはしないですね。それとは反対に、ベタ吹きに近い団体もあったりで。重ためのマーチにおける、付点のリズムの取り方って不文律があるじゃないですか。C.タイケとか、あの辺りのドイツマーチの。それ分かっていれば簡単にできることなんだけど。Bbのユニゾンから入って、半音でぶつけて、3度下がったところでIVのハーモニー入って、一瞬ウォルトン(編注:ウィリアム・ウォルトン。20世紀イギリスの作曲家)みたいなハーモニーに聴こえるんですよね。お洒落だなあ、最初から。あとこの曲も打楽器が面白いですね。打楽器の中でも音楽ちゃんとできちゃうから。よく考えて書いてますよね。

大井:5小節目がウォルトンっぽいなあ。なんでだろう。

天野:まず1小節目がユニゾンから始まってるじゃないですか。それで5小節目は完全なハーモニーから始まってますよね。同じリズムなんだけれども、この違いは意識すべきですね。それで、2小節目の16分音符は上行、6小節目は下行という違いも作ってある。このイントロ、8小節目、2拍目の裏に16分音符のアウフタクトが入るじゃないですか。これが4小節目は4分音符で伸びてて、同じパターンの繰り返しなんだけど、8小節目はちゃんと次に繋がるのりしろを作ってある。ただ、オーボエとクラリネットは4分音符のままで、この扱いをどうするかで凄く変わってくると思うんですよね。8小節目のティンパニとスネアは同じ4分音符だけど、これはアウフタクト的な扱いでいいんでしょう。あえてオーボエとクラリネットを4分音符にしたところが、ああ福島さんらしいな、って。

大井:そうなんですよ。この4分音符があるから、2拍目の頭が8分音符になっているパートのアーティキュレーションが良い意味で消されちゃうんですよね。

天野:オーボエとクラリネットも2拍目の頭が8分音符になってれば簡単じゃないですか。でもあえてそうしてないところがね、これ面白いなあって思いますね。いろんな解釈があるでしょうけども。結構彼の性格上ね、こういうところに拘りが。


天野:あとやっぱり特徴的なのは、ティンパニとバスドラムに装飾音が付いてることですね。これも面白いですね。その装飾に関して、いろんな解釈ができるわけじゃないですか。前に出すのかそうでないのか、2人で合わせるのかズレても良いのか。

大井:タイミングとニュアンスをよくよく相談しておかないと。

天野:頭からトライアングルが入るのも爽やかでいいですよね。楽器のサイズによっても叩く場所によっても全然変わりますからね、これもよく研究した方が良いでしょうね。


天野:9小節目からの管楽器のtuttiもよく考えられてますね。11小節目の頭に休符があるせいで、裏に入る音にエネルギーが溜まるじゃないですか。

大井:はい。

天野:ただffじゃなくて、当然の帰結としてffになっただけ、ということが見えてくれば良いですね。

大井:9、10小節目の4分音符も、なかなか適切なバウンド具合、長さ、ニュアンスが難しいです。

天野:これもいろいろな解釈・イメージ・やり方があるから、初見合奏だと皆バラバラになっちゃうでしょうからね。私は音を置いてくイメージになっちゃうんだけど。

大井:だけどffまで行く方向性も必要ですね。

天野:そうです。さらにその後にmfの世界になって、ちょっとした繋ぎがあって...よく考えられてますね。[A]の1小節前、バスドラムの1発だけドンッ、と。

大井:重みがね。

天野:そして[A]に入るアウフタクトがない。Trioに入る前もアウフタクトがないじゃないですか。これが彼の凄く良いところですね。


天野:さて、第1マーチはmfの世界です。[A]の4小節間は儀仗的な流れを汲んでいて、その後の5小節目から裏打ちのあるマーチになる。なので、4小節間は止まっていて、5小節目から歩き始めるみたいなね、そういう風なニュアンスになってきますね。

大井:実際そう思わないと停滞しちゃう可能性がありますね。

天野:それから和声的には、[A]の8小節目1拍目がいわゆる倚音扱いですよね。同音反復でないパートにはスラーを書いてます。これの重心のかかり方を分かって表現できるかにかかってくるでしょう。

大井:[A]の5~7小節目で持って行かないと、このニュアンスが出せないと思いますね。

天野:はい、何も考えないで音を並べちゃったら、そういうニュアンスは絶対出ないんです。譜面をちゃんと読み込んでないと。


天野:28~30小節目の反復進行、2拍目から1拍目への進行がドミナント→トニック、ドミナント→トニックとなっていて、特にドミナントはぶつけた音で構成されていて、緊張→緩和、緊張→緩和のニュアンスがよく考えられている反復進行ですよね。これを繋ぐベースラインがC→Fisと悪魔の音程(増4度、減5度)を上手い具合に使っているから、ゼクエンツとしても、ちゃんと力学的なバランスを考えて書かれていて、やっぱり凄いなあと思いますね。

大井:ここはいろんなやり方ができますよね。28小節目の1拍目が4分音符で、29小節目(の1拍目)が8分音符+8分休符。だけど28小節目の1拍目にはテヌートがなくて、2拍目にはテヌートがある。ということは2拍目からのフレージングじゃないですか。これをどういうふうに表現するのか。それから[B]の3小節前、メロディーと低音の8分音符は、必ずしも同じ長さじゃなくてもいいかもしれない。

天野:いや当然でしょうね、これは。同じ長さにしたら絶対変だと思いますよ。

大井:でももしかしたら、全体をstacc.的なやり方にもできるかもしれない。

天野:ああ、なるほどね。まあなるほどね。私はこの曲だったらそうはしないけど。

大井:この辺りのテイストの感じで、全く違った曲になりますよね。

天野:なりますね。あとテンポも♩=108と♩=112じゃ全然変わってくるでしょうね。


天野:[B]からまた第1マーチですけど、今度は上にフルートが入ってきて音色がちょっと煌びやかになって、それで金管中音にちょっとした対旋律的な動きが出てくるじゃないですか。安易に木管中音に同じことをやらせてないとこも良いですね。サクソフォーンはちゃんと木管セクションの流れを汲んでいて。その後[B]5小節目を受けての6小節目の対旋律は、王道を行くサクソフォーンとホルンのユニゾンになってるわけだけど、こういうオーケストレーションの対比がよく計算されて書かれている曲だから、そこを読み解いて演奏すると全然また変わってくるでしょうね。

大井:はい。

天野:第2マーチに入る前も、ちゃんとした終止形です、ホルンとトロンボーンのリズムが。さすが福島さん、グロッケンシュピールに変なトリル書いてない(笑)。

大井:...(笑)。[C]のところは、たぶんトロンボーンはいくらでも音量出せるかもしれないんだけれども、低音楽器には限界が...。

天野:ありますね、当然。

大井:どういう風にバランスを取るか...いろんなやり方がありますね。

天野:トロンボーンとユーフォニアムをメインで出して、低音はそんな出さないってやり方もあるだろうし、同じバランスで出すやり方もありますしね。

大井:ええ。

天野:それに関連して、第2マーチを繰り返した[E]のところ、追っかけるパートが今度は木管高音にくるじゃないですか。こことの対比の仕方をどうするかによっても、([C]の低音の作り方が)変わってくると思うんですよね。

大井:はい、そうですね。

天野:まあ[E]の木管は、トロンボーンと同じくらい出すこともできるわけじゃないですか。こういうところもいろんな解釈ができるわけだから、個性が出て面白いですね。

大井:結構読み方がおざなりになるんじゃないかと思うのが、[C]の主旋律、4小節目と8小節目で長さが違う部分。

天野:ああ、はい。あえて長さを変えている理由があるわけですね。たぶん多くのバンドは、たくさん練習してるうちに慣れてしまって、8小節目も短くなっちゃうとこが増えてくるんじゃないかと思うんですよ。

大井:そう思います。

天野:でも、そうしちゃうと意味が全然変わりますからね。8小節目、タイの終わりが4分音符になってるからこそ、[D]のアウフタクトのトランペットのメロディーが活きてくるわけなんだけど。

大井:はい。

天野:こういうとこ、ちゃんと譜面を読み込んでるかどうかってことですよね。

大井:さらに[E]のときは8小節目タイの終わりが8分音符になっていて、1拍目裏で全員が休みになる。

天野:この違いも考えたいですね。


天野:[D]は伴奏がmpでメロディーがmf、[F]もスタートは同じなんだけど、cresc.が書いてあってニュアンスが変わってきますよね。それから、[D]は5小節目から伴奏がmfでメロディーがfになりますね。最初の4小節間との変化が、練習をしてくうちにあんまり明確に出なくなってきちゃうんじゃないかと思いますね。ちょっとしたところの、ダイナミクスのバランスも大事でしょう。

大井:ちょっとしたことをカッチリやるのが難しい。難しいというか...ちゃんと見せるためには、それぞれ意識してないと。

天野:そうですよね。慣れっこになっちゃうとこですよね。

大井:例えば[E]の4小節前の中低音のリズム感だったり、[E]の4小節目の8分音符2つだったり、フォームをしっかり出すのは、いわゆる「課題曲マーチ」みたいにはいかない。

天野:それから[F]は、cresc.の位置はほぼ全員同じですけど、mpからcresc.を始めるパートと、mfから始めるパートがある。行きつく先は全員f。スタートの音量が違えばcresc.のカーブも違ってきますよね。

大井:ここ、きちんとcresc.するの難しいです。

天野:難しいですね。

大井:そしてやるすぎると、まだ先にffがあるので...。

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天野:そうなんですよ、fまでのcresc.なんですよ。

大井:ここは工夫のしどころですね。

天野:mffのところはティンパニがアシストして、fffのところはサスペンディッド・シンバルがアシストしているところもいいですね。


天野:Trioの前は、ちゃんと見得を切ってますね、Trio入る前は、さっきも言いましたけど、アウフタクトがないんですよね。そして待望のpスタートです。

大井:待望の(笑)。

天野:いやー、でもここはオーケストレーションが素晴らしいんですよね。音の選び方がね。最低限の声部でちゃんとできるようにしてるから。でもこれも、油断すると4分音符の扱い方で雰囲気が変わっちゃうから、注意が必要ですよね。

大井:そうだと思います。メロディーのニュアンスも大切です。初心者の多いバンドだと、[G]の2、4小節目の実音Bの音だけが大きくなりやすいのと、スラーの終わりの音なのに押しちゃうだろうから、割と踏み絵みたいな箇所ですね(笑)。

天野:はい(笑)。

大井:スネアの「スッタタタ」も、なかなか難しいんですよ。

天野:みんな転んじゃうんですよ。だから、ここも審査しやすいんですよ(笑)。あとはスコアの解説にも書いてるけど、メロディーが五音音階的なホッコリした感じで、しかし伴奏系はしっかりした西洋和声になってるから、そういう組み合わせのニュアンス、そして4分音符の扱いがポイントですね。


天野:[G]の9小節目アウフタクトからはmpの世界で、中音域に第1テーマの形が出てきますね。認識ができるくらいは出てほしいですね。やりすぎてもいやらしいんだけど。

大井:結構ここは大きくなりやすいんですよ、mpの部分。上行型だからどんどん大きくなりやすくて。

天野:なっちゃいますよね。気を付けないと。

大井:ここは、ある程度自然に任せて大きくなったのを[H]の前でまたちょっと収めるていうやり方もあると思うし、逆に上行型で音量が上がらないようにセーブして色っぽく演奏することもできますね。

天野:ストイックに作るのと、自然に任せるのと、全然変わってきますね。最低限の情報しか書いてないって解説にも書かれていますから、いろんな解釈ができます。どっちもありでしょう。


天野:[H]からまたトランペットが入ってきて、それでサクソフォーンとホルンを中心としたさりげない対旋律ですよね、ハーモニーにもなりつつ。ベースラインの動きはそのまま踏襲してるんだけど、上に入ってくるものの鳴り方で、やっぱりちょっとずつニュアンス変わってきますからね。特に[G]のところは、いわゆる裏打ちがなくて、打楽器もそれに合わせて書いてあるんだけど、[H]は裏打ちにあわせて、頭打ちのパートも8分音符になっています。こういうところも、彼の職人技が光ってる! こういう譜面の違いをしっかり読み解くかどうかでしょうね。


天野:Trioも本当に美しいメロディーで、わざと彼は大きなフレージングスラーにしてないじゃないですか。それを意識するだけでだいぶ変わると思うんですよね。なんでこういう1~2小節くらいの短いスラーにしたのかっていうね。

大井:こういうスラーを見ると、違和感がなくて落ち着いちゃうんだけど、そう言われてみるとそうですね。

天野:弦楽器のボウイングで言ったら、これに近い形になるだろうから、そういう風なニュアンスを持ってますね。よく考えられたフレージングになっています。


天野:[I]のブリッジ、一応「課題曲マーチ」のスタイルを踏襲して(笑)、イントロのパターンを使っていますね。ただハーモニーが変わってるだけじゃなくて、2、4小節目のサクソフォーンとホルンには新しい音形が増えてますね。 そしてスネアが上手いですね。イントロとは違って、途中からサクソフォーンとホルンの新しい動きの方を補佐するかたちになっていて、素晴らしい!

大井:この新しく増えたリズムが、次へののりしろになるんですよね。

天野:そうです。そしてこの後が、この曲すべての中で一番素晴らしいところ。[I]の5小節目からオルゲルプンクト(持続低音)じゃないですか、それもドミナントで。マーチで、ドミナントで...こんなに長い間やってくれるなんて、こんな嬉しいことないですね(笑)。和声課題ですよ、まるで。

大井:(笑)

天野:ドミナントでずっと保続音(保続低音)が鳴ってると、上でどんなに和音が変わっても、性格的にはドミナントなわけです。それでいて、さっきも言ったけど最低限の情報しか書かれていないわけで。楽譜通りに、強弱記号が書かれている場所で段階的に強弱を変えていくやり方もあるけど、やっぱりドミナントの保続音があって、そのリズムも段々と変わっているわけで、そうするとやっぱりいろんな考え方ができるんですよね。ここもいろんなバンドの個性が出るところじゃないかなと思いますよね。

大井:そう、これは福島さんとも話したんですけども...答えは秘密なんですけど...僕たちは、ブラームス以降の場合は、cresc.がそこに書いてなければ、それはcresc.しないと考える訳ですよ。完全にそうだとは言い切れないけど、基本的には。でも、例えばモーツァルトやハイドンの時代だと、必ずしもそうではない。強弱記号同士の間について書くというスタイルが無かったわけですよね。

天野:不文律ですからね。

大井:逆に言うと、この曲の中でcresc.がわざわざ書かれているときは、どれだけ重要かって話なんですけども。必ずしも、書いてないから全くcresc.しない方がいいというわけではない。

天野:ただ、その匙加減ですよね。cresc.のカーブをどうするかって言うね。それが、いろんな解釈があるだろうから。[J]のトランペットや低音は、長い音符ではcresc.をかけないで、塊ごとに少しずつcresc.するイメージが良いんじゃないかなって。メロディーは、なだらかにcresc.して良いと思いますが。それで最後[K]の2小節前の書いてあるcresc.でぐっと強弱に変化を付ける。

大井:そうですね。ところが、早い段階でcresc.をかけすぎてしまうと、[K]の前のcresc.は何のために書いてあるんだという話になっちゃう訳です。

天野:そうなんですよ、そこを上手い具合にやっておかないといけないんですよ。だから構成としては、やっぱり[K]の2小節前から一番膨らむって形に持ってく作り方ですよね。

大井:そこにエネルギーが向かう。

天野:それで[K]でトニックに入ったときの、この開放感! ドミナントからトニックに行ったときの喜びって言うかね。ベートーヴェンの交響曲第5番の終楽章に入るとこみたいな。あの、C-Durのテーマが出たときの、開放感に通じるものがあると思います。それを見越して[K]までの部分を構成する必要がありますね。

大井:これはひと夏取り組む価値がありますな、特にここ。

天野:いろんなやり方ができるから、いいと思いますよ。


天野:[K]のグランド・マーチに入っても、やっぱり節度守ってるからね、さすがに。中音の追いかけも入ってくる。メロディーは、Trioと同じだけれども、マルカートっぽくなるように、リズムを付点に変えたりしてますよね。そのまま強弱を上げるだけではグランド・マーチの感じが出しにくいでしょうからね。イントロもそうだけど、付点8分+16分の扱いが、この曲では特に大事だと思います。

大井:はい、そうですね。

天野:それで、141小節目で打楽器が白玉になってリズムが薄くなるところがあるじゃないですか。ここのホルンがいいですねえ。

大井:金管はmfで抑えられてるかと思いきや、ホルンはf

天野:ここも和音が、ちょっとウォルトンっぽくなるんですよね、響きが。お洒落だなあ。


天野:[M]の1小節前から、またオープニングのファンファーレの形が入るじゃないですか。でもこれ、ちょっと油断すると聴こえづらくなっちゃうんですよね。木管が何も考えずにガンガン吹いてると。かといって、あからさまに弱くするのも変だから、その匙加減でしょうね。

大井:そうですね。二つの方向性があるんですよね。同じ小節の中にね。

天野:そうです、前のフレーズの終わりと、次のフレーズの始まりが。その「のりしろ」の部分ですからね。

大井:意識して入らないと。

天野:そうなんです。上手くバランスが取れないと、フレーズの終わりがしぼみ過ぎちゃったり、ファンファーレの頭が聴こえ辛かったり。

大井:[M]の3小節前、2小節前のいわゆる定型句、シンバルには特段なにも書いてないけど、役割を考えて演奏したいですね。

天野:トライアングルが入ってるのも面白いですよね。これがまたお洒落。華やかさが出るし。この[M]からのちょっとしたコーダもよくできてますよね。オープニングのファンファーレを持ってきながら、ちゃんと締めくくりをつくるために。

大井:[M]からの、16分音符の上行型をわざとしつこく繰り返すことによって「芽吹き」というか、たくさん芽が出てきてる感じがあるんじゃないかなあと。

天野:そうですね、しかもこういう「しつこさ」ってここだけなんですよね、この曲。最後の最後にこれを持ってくるあたり、よく考えてるなあ。

大井:そうですね。

天野:この前も大井さん言ってたけど、カレル・チャペック(編注:チェコ出身の作家)のエッセイに触発されて書かれたそうだから...私なんかはチャペックって言うと"ロボット"の印象が強いけれど(笑)。

大井:そうですよね(笑)。曲が作られる経緯がそうだったからか、ヨーロッパの古い行進曲っぽいですね。でも、人間がこう、ドンスカドンスカ歩くのではない、植物が芽吹いてゆく、ちょっとした軽さと言うか、朗らかさみたいなのがあるなあと思います。

天野:ありますね。だから実用マーチじゃないんですよ、そういう意味では。もちろん実用でも使えるんだけれど。

大井:ファンタジーの部分が感じられます。

天野:だって映像化できますからね。

大井:そうですね、本当にそうです。

天野:歩いてる映像じゃないんですよ。いま大井さんがおっしゃった植物の芽吹きだったりソ育ち方だったり。これも、コンクール関係なく演奏し続けてほしい作品ですね。

大井:トライアングルの使い方なんか、凄くオーケストラっぽいですよね。

天野:ですね。彼はよく研究してるから、そういう書き方ができるんでしょうね。トライアングルの選択も、いろいろできると思うんですよ。私だったら、今どきの楽器と言うよりは、マーラーで使うような楽器が良いと思うんですよ。

大井:そうそう、そうだと思います。

天野:どちらかというと大きめで、ビーターも少しだけ重ためで。叩く場所にもよるけど...トライアングルはいっぱい研究して欲しいですね。楽器が小さくても、工夫次第でいろんな音が出せますからね、ビーターを変えるだけでも。しかし良い曲です、これは。

【天野 正道】
国立音楽大学作曲科首席卒業、武岡賞受賞。同大学院作曲専攻創作科首席修了。在学中よりクラシック、現代音楽はもとよりジャズ、ロック、民族音楽から歌謡曲まで幅広い創作活動を行う。卒業後オーストラリアに赴き日本人で初めてC.M.I.(Computer Music Instruments)をマスターし、日本におけるコンピュータミュージックの第一人者の一人となる。多くのアーティストのアルバム、映画、アニメ、ビデオの音楽、数多くのCM、TVの音楽制作を行っている。2000年、第23回日本アカデミー賞音楽部門優秀賞受賞。2001年、第24回日本アカデミー賞音楽部門優秀賞受賞。2000年、第10回日本吹奏楽学会アカデミー賞受賞(作・編曲部門)。尚美ミュージックカレッジ専門学校特別講師。

【大井 剛史】
東京藝術大学指揮科を卒業、同大学院指揮専攻修了。 東京佼成ウインドオーケストラ正指揮者。国内の主要なオーケストラを指揮し、いずれも高い評価 を得ている。現代作品、オペラ、バレエなど幅広い分野で活動中。2008年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール第2位。東京藝術大学音楽学部器楽科非常勤講師(吹奏楽)。尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授。

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