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2026.04.28

IV. 管楽器のためのフィナーレ/伊藤 康英
≪曲の特長≫
ベテラン作曲家による、複雑で、非常に「作りこまれた」作品です。
≪こんなバンドにおススメ≫
表現で他のバンドと差をつけたい、上級バンドにおススメです。
≪より良い演奏のためのヒント≫
全体
- この作品はいわゆる「ソナタ形式」で書かれていて、構成とその内容、調性を意識して演奏すると、音楽に説得力が生まれます。音楽がどこに向かっているのか、どの和音が大切か、どう盛り上げるか、おさめるかなど、メンバー全員で共有しておくと、より効率良く「音楽作り」を行うことができるでしょう。
| 場所 | 構成 | 内容 | 調性 | |
|---|---|---|---|---|
| 曲の冒頭 | 序奏 | 曲の導入 | c moll | |
| Allegro vivace | 提示部 | 第一主題 | 1つ目の主題を提示 | c moll |
| 練習番号[C] | 推移 | 音楽の場面転換 | 転調 | |
| 練習番号[D] | 第二主題 | 2つ目の主題を提示 | g moll | |
| 練習番号[E] | 小結尾 | 提示部のまとめ | Es Dur | |
| 練習番号[F] | 展開部 | 両方の主題が発展 | 転調 | |
| 練習番号[H] | 新推移 | 再現部に戻る準備 | C Dur | |
| 練習番号[I] | 再現部 | 第一主題 | 主題の再提示 | c moll |
| 練習番号[J] | 第二主題 | 〃 | f moll | |
| 練習番号[J] | コーダ | 曲全体のまとめ | C Dur | |
- アーフタクトで2拍子の音楽なので、2拍子の大きなフレーズ感を感じながら、基本的に強拍(1拍目表)に重心を置いて演奏すると、流れるような自然な表現となるでしょう。
- 39、46小節目「rinforzando」(リンフォルツァンド=強調して)、41小節目「en dohors」(アン ドオール=他よりもきわだたせて」など、普段あまり見慣れない音楽用語はバンド全員で共有しておきましょう。
木管楽器
- Picc.の音域が全体的に高く、バンドの中に音を溶け込ませるがとても大変です。高音域はできるだけ軽く小さ目に吹くように心がけて、オクターブ下を吹いているFl.1はPicc.の音が孤立しないよう、少し大き目に吹いてPicc.の音を下から支えてあげると良いでしょう。
- Picc.と同様、E♭ Cl.も高音域がたくさん出てきて、Fl. / Picc.と音程を合わせるのが大変だと思います。高音域の音程が低くなりがちなE♭ Cl.は耳をよく使って高めに音程を取るように心がけて、逆に高音域の音程が高くなりがちなFl. / Picc.も、音程が高くなりすぎないよう、お互い歩み寄って合わせられると良いです。(音程が一定な鍵盤打楽器(Glock.&Xylo.)の音量を少しだけ大きくすることで、音程の開きを中和・ぼかすのも良いです。)
- 木管全体のユニゾン、オクターブ・ユニゾンの響きの中心が、近年の吹奏楽作品に多いA.Sax. 1ではなくCl. 1を軸にして書かれている印象です。A.Sax.は木管をリードするというより、Sax.パートのサウンドをまとめてCl.を下から支える役割を意識した方が、バンド全体のサウンドのまとまりが良くなると思います。
金管楽器
- この作品ではHrn.パートがオーケストラ作品のHrn.パートのような使われ方をされていて、木管楽器、金管楽器、低音楽器と、異なる音色群の間をつなぐ橋渡し役と大活躍します。周りのいろいろな楽器にアンテナを張り巡らせながら、最適な音色、音量を研究すると良いでしょう。
- Hrn. 2、Trp. 2、Trb. 2と、金管各パートの2nd奏者が和音上重要なハーモニーの音を吹いている箇所が多い印象で、音量はそこまでなくて良いのですが、楽器をしっかり鳴らして1stとのハモリを客席に聞かせる意識で演奏すると、バンド全体が豊かな響きになるでしょう。
- Euph.が木管低音やSax.群と一緒に動く箇所が多く、特に薄い場面では音質・音色的に少しだけ芯のある、細目の響きをイメージして演奏すると、木管低音/Sax.群との一体感が出やすくなると思います。
低音楽器
- スタッカートや山型アクセントのついたスタッカートは、音を短くしつつ、音程が聞き取れる位の短さで響かせると、和音、ベースラインが分かりやすくなって効果的です。
- 5小節目の「rf」(リンフォルツァンド)は、7小節目アーフタクトの「ffアクセント」や「sf」(スフォルツァンド)とは区別して、小さな発音から急速に音を膨らませるイメージのアーティキュレーションで演奏すると良いでしょう。
- 9~21小節目や練習番号[F]~[G]など、TubaとS.B.の休みが長く続く場所は、木管低音やEuph.が若干大き目にしっかり鳴らして、ベースラインを聞かせる意識で演奏した方が、和声進行や縦の響きが安定してバンド全体のサウンドが充実するでしょう。
- 和音や和音進行が分かりにくい曲想ですが、低音パートは他のパート以上に前述の各部分の調性、移調を念頭におきながら演奏すると良いでしょう。大切な音(それぞれの調の主音、第5音など)とそうでない音の区別がついて、バンド全体が説得力と色彩感のある演奏になると思います。
打楽器
- 打楽器は全体的に、音色感に特にこだわって演奏したい作品だと思います。スコアを見ると、曲の中のどのような動きの中の一部分なのか、大まかなイメージがつかめるので、アーティキュレーションや発想記号を参考に、最も適切な音色、音量、叩き方、皮のチューニングの高さなどを研究すると良いでしょう。
- 2、3小節目のB.D.とC.C.は山型アクセントにスタッカートがついた「f」ですが、Timp.や低音パートのベース音より大きな音量で叩いてしまうと和音が不明瞭になってしまうので、ベースラインをうまくサポートして、かつドラマチックに聞こえるような音量・音色になると良いです。
- 6小節目のTimp.の「rf」(リンフォルツァンド)は、低音パートの「rf」の鳴らし方を参考にして、ロールの叩き初めの音にアクセントがつかないような、アタックをつけるというよりも「急速に膨らませる」ようなイメージで叩くと良いと思います。
- S.D.は練習番号[B]から[D]にかけて、細かなニュアンスを叩き分けられると良いです。
「ppp スタッカート」(15小節目)
「pp スタッカート」(24小節目)
「p スタッカート」(26小節目)
「p スタッカート 山型アクセント レッジェーロ」(30~34小節目) - ・Timp.は音変えが多く、特に練習番号[H]から[I]のあたりは少ない休みでたくさん音を変えないといけないので、演奏しながら足のペダルで音を変える場面が出てくるかもしれません。4つのTimp.をどの音からどの音へ、どのタイミングで音変えするか、整理してパート譜に書き込んでおくと良いでしょう。
≪その他≫
- 音楽の表現が一筋縄ではいかず、指揮者の先生の負担が大変大きい作品です。限られた時間で指揮者の先生が少しでも効率よく合奏できるよう、演奏者も楽譜に書かれた音楽用語を調べる、他のパートとモチーフの吹き方を統一する、アーティキュレーションやスラーのニュアンスなどを研究するなど、積極的・自発的に「音楽作り」に参加しましょう。

広瀬 勇人
管弦打楽器学科/音楽総合アカデミー学科 講師
Profile
作曲家。東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現・尚美ミュージックカレッジ専門学校)を首席で卒業後、アメリカ・ボストン音楽院作曲科で優秀賞を受賞し卒業。ベルギー・レメンス音楽院大学院にて作曲をヤン・ヴァンデルローストに師事。作曲科および指揮科を卒業し、修士号を取得。日本現代音楽協会新人賞入選、ニューイングランド学生作曲コンクール第1位、21世紀の吹奏楽「響宴」入選。日米欧の各出版社より多くの作品が出版され、ドイツ、スイス、シンガポールの吹奏楽コンクール課題曲に選ばれる。尚美ミュージックカレッジ専門学校講師。
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