
ユーフォニアム上達のための10箇条
皆さん、楽しくユーフォニアムを吹いていますか? 楽器が上達すれば、より深く音楽を楽しめるようになるはずです。ここで紹介する10個のアドバイスを基に練習すれば、もっと楽しく、そして思い通りに楽器を扱えるようになります。さらに、このアドバイスを意識することで、より音楽的で、聴き手への思いやりにあふれた演奏ができるようになるでしょう。
一度読むだけでなく、日々の練習で行き詰まったときなど、たまにこのページに戻って何度も読み返し、皆さんの上達に役立てていただければと思います。
【1】自分のベストの音を知ろう
皆さんは、どの音から一日の練習を始めていますか? 私は第三倍音の「F」の音から吹き始めています。吹きやすく、音抜けもよいので、この音を自分の基準として使っているのです。
人によっては、やや低めの第二倍音の「B」の音がリラックスして心地よく吹けるかもしれません。あるいは、チューニング音である第四倍音の「B」が吹きやすいという人もいるでしょう。まずは自分が一番落ち着いて、ベストな音色が出せる音を探してみてください。最終的には、どの音域でも同じように心地よく出せるようになることが目指すべきゴールです。
【2】自分のベストの音を広げていこう
ステップ1で自分のベストの音が見つかったら、その音色を他の音にも「コピー」するように練習していきます。これには、レミントンのウォームアップ・スタディーズの冒頭などで紹介されているインターバル練習がおすすめです。
自分のベストな音を基準に、そこから半音ずつ下行・上行していきましょう。その際、息のスピードや姿勢、アンブシュアを微調整し、どの音でも音色が均一になるように工夫しながらアプローチしていくのがポイントです。
【3】スケール・リップスラーで音域を拡大しよう
練習の最初からスケールやリップスラーを始める人も多いようですが、私は半音からスタートするインターバル練習を経てから移行することをおすすめしています。
これらの練習をするときも、やはり自分のベストな音から開始するのが理想的です。ベストの音色を、あらゆる音域でも再現できるように地道に練習を続けていきましょう。
また、スケールやリップスラーを吹く際には調性感を意識してほしいものです。おすすめは、ピアノやキーボードなどで主音を鳴らしながら吹くことです。調性を耳で感じる能力や、ピッチをコントロールする技術が飛躍的に高まるはずです。
【4】練習は落ち着いて、問題が生じたら一からやり直そう
練習をしていると、どうしても夢中になって吹くことばかりに意識が向いてしまいがちです。吹き直す際にムキになってしまい、間違えた場所だけを雑な奏法で何度も反復している人をよく見かけます。
ユーフォニアムを美しく鳴らすために、まず何より大切になるのは「深いブレスを取ること」です。曲のテンポや雰囲気に見合ったブレスが取れて初めて、良い音が生まれます。立ち止まって吹き直すときこそ、毎回、適切なブレスをリセットして取り直してから楽器を鳴らすようにしましょう。
【5】練習時間の多くはテンポを下げて練習しよう
皆さんは、メトロノームをテンポを上げるためだけに使っていませんか? 私の場合は、丁寧に、そして走らずに練習するためにメトロノームを活用することがあります。
素晴らしい演奏の裏側には、必ず丁寧な練習の積み重ねがあります。けっして、最初からインテンポのまま力任せに反復練習しているわけではありません。練習時間の多くはあえてテンポを下げ、メトロノームの機械的なカチカチ音に縛られすぎず、無理のない奏法で、すべての音域の音色が均一になるようじっくりと練習を重ねていきましょう。すべての音に気持ちが行き届くような、丁寧な練習を心がけたいものです。
【6】長い音・短い音の練習のバランスを考えよう
ロングトーンは上手くできるのに、曲になると途端に魅力が半減してしまう、そんな悩みを抱えている人は、豊かな響きを伴ったセンスのよい短い音の練習が足りていないのかもしれません。
スタッカートのような短い音であっても、ユーフォニアムらしい豊かで立体的な音色感が必要です。そのために、次のようなアプローチを提案します。
タンギングを伴うフレーズを練習する際は、あえて一度スラーでゆっくり吹いてみてください。逆に、スラーのパッセージはタンギングで練習もしてみます。前者の練習をすれば、音が短くなっても息の支えがキープされ、きちんと良い音色が保たれるようになります。後者の練習をすれば、スラーのなかに隠れた一つひとつの音の安定性が向上するはずです。
【7】曲を練習しながら基礎練習を取り入れよう
新しい楽譜を配られたとき、やみくもに曲の最初から最後まで通して練習してしまっていませんか?
まずは、その曲が何調なのかを理解し、該当するスケールやアルペジオの練習を取り入れてましょう。楽譜と向き合う際にも、そのフレーズに求められているテクニック(跳躍、速いタンギングなど)を分析し、基礎練習へ上手に繋げていくのが上達の近道です。スケールをさまざまなテンポ、リズム、アーティキュレーションのパターンで練習することで、曲を吹くための基礎力が底上げされます。
『アーバン』をはじめとする定番の教則本には、こうしたリズム練習や跳躍、タンギングの練習が紹介されています。手元に定番の教則本を 1 冊持っておくことを強くおすすめします。
【8】練習を通して心身共に成長させよう
楽器を心地よく吹くためには正しい呼吸が必要であり、理想的な呼吸のためには安定した姿勢が不可欠です。ユーフォニアムの重量は約4キロあり、演奏中にその重さに気を取られて姿勢が左右に歪んでしまうことがよくあります。
これを防ぐために、ぜひ鏡を見ながら練習してみてください。また、椅子に座る座奏だけでなく、立って吹く立奏もバランスよく取り入れましょう。身体が左右対称に近づくことで、驚くほど自然に深いブレスが入りやすくなります。
そして、普段から自然で深い呼吸が身についていれば、本番のステージでも緊張をコントロールしやすくなります。基礎体力をつけるための適度な運動や筋トレも、演奏の土台を大いに支えてくれるでしょう。
さらに、人前での演奏機会を積極的に持つことで、メンタルも鍛えられます。演奏は常に完璧にできるものではありません。ちょっとした失敗を「成長のチャンス」と捉え、原因を探って次に活かす。それを繰り返していけば、心身共に研ぎ澄まされた演奏に近づけることでしょう。
【9】目指すべき音色・音楽を探そう
心に響く演奏をするためには、自分の中に明確な理想のイメージを持っていなければなりません。単にメトロノームやチューナーで合っているだけでは、良い音楽とは言えないからです。ユーフォニアムの最大の持ち味である、包み込むような温かい音色感、そして歌心が伴ってこそ、音楽に命が吹き込まれます。
そのような理想を育むために、ジャンルを問わずたくさんの素晴らしい音楽に触れてください。
ただし、人の外見や声がそれぞれ異なるように、誰かの音色や音楽性を完全にコピーすることはできません。憧れの理想に近づく努力を続けながらも、同時に自分の長所を理解し、短所を少しずつ改善して、あなただけの唯一無二の音楽を追求していきましょう。
【10】ユーフォニアムの響きを通して、様々な文化に触れよう
いま練習している曲が、「どこの国の」「どんな作曲家によって」「どのような背景や意図で」作られたものかを知っていますか?
より深い音楽表現を手に入れるためには、指のテクニックだけでなく、地理や歴史、美術、文学といった幅広い教養が大きな助けとなります。それらの背景を知ることで、楽譜に書かれた音符の裏側にある作曲家の想いを、より立体的に想像できるようになるはずです。
ユーフォニアムの豊かな音色で、美しい絵画、綺麗な風景、そして人間の深い喜怒哀楽まで、言葉を超えて多くのものを表現できます。楽器の練習を通じて、ぜひ世界中の多様な文化への扉を開いてみてください。
おわりに
このコラムでは、ユーフォニアム上達のための10のアドバイスを書かせていただきました。でも、実際に生の音を聴いたり、直接レッスンを受けないと見えてこないことがたくさんあります。
尚美ミュージックカレッジ専門学校では、オープンキャンパスで実技体験レッスンを受けることもできるので、是非ご参加いただき皆さんの音楽性が向上することを願っております。

齋藤 充
管弦打楽器学科 講師
Profile
国立音楽大学卒業、ミシガン大学大学院修士課程、ノーステキサス大学大学院博士課程修了。日本管打楽器コンクール、フィリップ・ジョーンズ国際コンクール、レオナルド・ファルコーニ国際コンクールにおいて第1位。国際チューバ・ユーフォニアムカンファレンス、米陸軍音楽隊チューバ・ユーフォニアムワークショップなどにゲスト出演するなど、国内外で演奏活動を行なっている。現在、侍Brass、ズーラシアンブラスメンバー。尚美ミュージックカレッジ専門学校、国立音楽大学、同附属高等学校、洗足学園音楽大学、東邦音楽大学各非常勤講師。2019年音楽之友社より、もっと音楽が好きになる 上達の基本 ユーフォニアムを出版。
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