楽器別ワンポイントアドバイス – 打楽器編

2026.10.09

上達するために必要なこと

打楽器に必要な技術についていくつか示したいと思いますが、その前に知っていただきたいことがあります。

打楽器に限らずどの楽器にも特有の音色があり、その美しさに人々は魅了されます。打楽器に重要なのはこの音色を追求することだと思います。どんなに速いパッセージを弾けるようになっても、音色が伴っていなければ魅力的な演奏にはならないでしょう。

そして、楽器の上達には二つの大きな柱があると考えます。

一つは「基礎練習」。
基礎が重要である、というのはわかりやすいですね。

もう一つは「音楽を知ること」。
知るというのは、研究と捉えても良いですが、具体的には良質な音楽を鑑賞することです。どのような音色が美しいのか、どのようにすると美しくかっこいいフレーズで歌えるようになるのか。これは、知らなければそうなれるはずもなく、一流プレーヤーの音楽を見聴きして初めてそれに近づこうという発想が生まれるのです。それをしないうちは、自分がこれまで見聴きした範囲内での演奏しかできません。技術をどんなに磨いても、それを生かし切ることができないで終わってしまうのです。

どうか、演奏する喜びに鑑賞する喜びを加えてみてください。演奏することがさらに楽しく充実したものになるでしょう。

これをもっと具体的に解説します。例えば、演奏会や吹奏楽コンクールでマーチを演奏するとします。マーチというジャンルにはそれ特有の表現があり、何十年も前から世界中で愛されてきた名マーチを鑑賞していれば、それを自然と表現したいと思うでしょう。それをせずに目の前の楽譜を演奏したところで、マーチ特有のニュアンスは出せないで、ただ正確に演奏することで終わってしまいます。

このことはどのジャンルにも言えます。どの曲をやるにしてもそのジャンルがどんなものであるのか、知ることがとても重要なのであります。

技術的なこと

さて、技術の話をします。ここからの大前提は、どんなパターンにおいてもメトロノームを使用し、ゆっくり正確に弾けるようになったら、それをだんだん高速にしていくことです。そして、利き手から始める手順で練習し始めてかまいませんから、同じことが反対の手順でもできるようにすること。

そして可能な限り鏡を使用し、自分を客観的に見ながら練習しましょう。

まず重要なのは、一つ打ちを右手と左手が同じ音量やスピード感で動かせることですね。下記の譜例①と②を練習してみてください。

次に、各リズムを正確に弾けるようにするよう、譜例③の練習をやってみてください。

奇数小節目で16分音符を均等に叩いたら、偶数小節目は休符のところを空振りさせ、音符の部分は奇数小節目の16分音符と同じ品質で繰り出すことを意識しましょう。

これらのリズムを正確に弾けるようにすれば、だいたいの曲を正確に弾けるようになれるでしょう。


さて、打楽器の演奏において非常に重要な盲点があります。

これを①のように片手で叩く場合、一つ一つの音は紛れもなく八分音符のスピード感になります。
しかし②のように交互に叩くと、右手だけ、あるいは左手だけを取り出すと四分音符となり、一つ一つの音は四分音符のスピード感になります。
つまり交互に叩くことで、八分音符であるにもかかわらずうっかり四分音符の音色で叩いてしまうことになります。

譜面通りに弾けているはずなのになぜか緩い表現になってしまうのは、ここに原因がある可能性があります。
交互に叩く場合、どんな音符であってもその音符に見合ったスピード感で叩くことを意識することで、キレのある表現ができることと思います。

さて、いくつか練習のための譜例を示しましたが、もっとたくさんの譜例が書いてある教則本に沿って練習を進めていくことをおすすめいたします。

最後に、お金がかかる話をします。

上達には、自分のバチ等を持つことも大切です。三年間の学生生活のなかで、スネアドラムのスティック一組しか買わない人が多いように思います。楽器は学校の物を共有せざるを得ないとしても、ティンパニや鍵盤のマレットは自分の物を持つことで、演奏する喜びが倍増しますし、上達にも繋がります。

少なくとも、練習台、教則本、メトロノームは自分専用の物を全員が購入することをおすすめいたします。


荻原 松美

管弦打楽器学科 講師

Profile

長野県出身。国立音楽大学卒業。「シエナ・ウインド・オーケストラ」打楽器奏者。フルート・ピアノ・パーカッションのアコースティック・トリオ「賛美音」メンバー。他に、オーケストラのエキストラプレーヤーとして、また、上野信一&パーカッショングループ“PHONIX”のメンバーとしても活動。尚美ミュージックカレッジ専門学校、長野県小諸高等学校、各非常勤講師。「イノベイティブ・パーカッション」、「エバンス」、「CANOPOS CONCERT SERIES」のエンドーサー。