
コントラバスとは
楽器名として「コントラバス」という言葉は、弦楽器の最大のものを指しています。しかし、言葉の本来の意味は「より低い音域」ということで、楽器の種別については省かれています。「コントラバス◯◯◯」という管楽器があることがその証左です。弦楽器においても昔はヴァイオリンやガンバなど種類があり、それぞれの最低音域の楽器があり、「コントラバス」を頭につけてサイズを表していました。昔は搬送も難しく、各地で多種多様な形が作られたため、種類を確定することの意味がなくなってきて、省略されたと考えられます。
様々なアンサンブルにおいて弦楽器のコントラバスが使われる理由は、弦楽器以外ではこの音域を容易に扱える機能が作れないことが大きいです。したがってコントラバスは、他の楽器が作り出せない音域を担っています。であるからには、どんな演奏形態であっても、そこに馴染む音を作り、一体化した音が現れるように意識しなければいけません。弦楽器ではありますが「アンサンブルの最低音域を担う楽器」と捉えて種別を超えた音作りの発想ができるように心がけましょう。
楽器の状態について
弦楽器は薄い木材で作られるため、本来は緻密な管理が必要です。しかし、コントラバスは部材の厚みもあり、繊細な作りをあまり要しないので、扱いに極端に慎重になる必要はありません。ただ、温度変化や湿度変化が急激に起こると、板の破損を招きます。保管には注意しましょう。
弦を強い力で張っていますので、駒の状態も気をつけましょう。湾曲はわずかであれば問題ないですが、酷くなるとそもそも弦の張力を支えられなくなります。薄く作られた駒は曲がりやすいので幾分厚みのある駒を使うことをお勧めします。
楽器の中に立っている魂柱も張力を支える大事なものです。板が魂柱の影響で極端に歪んでいる場合は修繕したほうがよいでしょう。魂柱は駒の足の高い音の側の下についています。反対側には「バス•バー」という細長い板が表板の裏側に貼り付けてあります。確認しておきましょう。
弦は、スチール弦を使用していると思います。性能が良いものであれば、頻繁に取り替える必要はないでしょう。巻いてある金属線のほつれが酷くなったり、弦の柔軟性が乏しくなったら交換しましょう。
弓は、毛を張っている棒の部分が毛のほうへ湾曲していることで、毛を張る力が逃げないように設計されています。毛を張り過ぎると、湾曲がなくなり、弓の機能が活きないばかりか損壊のおそれもあります。保管するときは毛にかかる張力を弱めて湾曲を保つようにしましょう。
松脂は様々なものがあります。気候によっても使われるものが変わったりします。程よい粘りがあるものが適当だと思います。季節によって弾きやすさなどが変わってきますので、保存方法なども含め工夫してみてください。
楽器の構え方
楽器の構え方等については教則本や映像等を参考にして良いのですが、注意すべきことがあります。
コントラバスは最初に述べたように、楽器の形や大小が多種多様です。また、それと奏者の体格との組み合わせも無限にあることになります。ですので、絶対的な構え方はないと捉えて、なるべく多くの事例にあたり、自分にあったスタイルを模索することが大事です。
構え方によっては、身体のバランスを崩して健康に影響を与えることもあります。これはコントラバスを立てた状態のところに身体を合わせていくことで生じます。大抵の楽器は(動かすことが出来ない楽器を除く)自然な身体の姿勢があるところに楽器を組み込むように構えます。コントラバスはその大きさゆえに、この発想が欠けてしまいます。身体が歪んだ状態で演奏しないように、楽器を置く位置を変えたり、楽器の脚の長さを調整してみましょう。
楽器を立てて演奏している奏者は、身長が高いか体幹が強いために、演奏ができています。実は腰を痛めている奏者も多いです。身長が180cm以下の場合は楽器を自分側に前後左右とも倒していくことをお勧めします。
弓の持ち方は2種類あり、ヴァイオリンやチェロのように持つ「フランス式」と、フロッシュを包み込むように構える「ドイツ式」があります。日本ではドイツ式が主流で、粘りがあり力強い音を出すのに適していて、細かく繊細な音を出すのは難しいです。持ち方については、やはり多くの事例を参照にして、うまくいくものを探るほうがいいでしょう。どちらの持ち方も、手を脱力して指が軽く曲がった状態のところに弓を組み込んで形が出来上がると良いでしょう。手首に力が入って固まらないようにすることも大事です。
コントラバスの発音のしくみ
コントラバスは音が出ていない時でも、弦には相当な張力がかかっています。張ることによって静止している弦に、力を張っている方向と異なる向きに、外から力を与えると、緊張が解かれて振動します。これを駒を介して胴体で増幅させて音が出ます。音を出すためのパワーはすでに楽器側に蓄えられていて、奏者はそれを引き出せば良いと考えてみましょう。
弦が振動している現実の動きは「ヘルムホルツ 弦」と検索してみると、普通イメージしているものと違うことがわかり、弾き方のヒントとなるでしょう。ここにおいても教則本などの指摘を鵜呑みにせず、考えてみることが必要です。
弓の機能について
弓は毛を弦に当てて擦ることで、弦が振動します。これは、誰でも分かっていることです。
では、解放弦を指ではじいて振動させておいて、そこに弓を置いてみましょう。すると弦の振動は止まります。これも理解できますね。
しかし「弓は弦の響きを止める機能がある」という発想に至ることが出来たでしょうか?
強い音を出そうと弦に弓を強く押し付けているとき、弦は振動しようとしますが、同時に振動を阻害されてもいるのです。このことと前項のことを理解して演奏に臨むと、楽器から出てくる音は響きの豊かなものになります。
左手の押さえ方について
弦を押さえて音高を変えるとき、大きな力が必要であるように感じていると思います。もちろんある程度は必要ですが、いくつかのポイントを押さえて、左手にかかる負荷を軽くすることが出来ます。
まず、弦と指板の間の距離が適切か確認しましょう。駒に近い指板の端のあたりで指が間にスルリと入ってしまうようですと距離が空きすぎています。駒の高さを変える等の調整が必要なので、楽器店等専門家にお願いして調整してもらいましょう。
次に、左手指の役割は音高を作り出すことであり、弦を指板に押さえつけることではないことを理解しましょう。弦の音高は、該当箇所の振動を止めれば変化します。指先でつつくなど様々な方法を試みてみると、さほど力を入れなくてもよいことがわかります。
実践としては「手を丸める動きで、弦を手の内側へ引き込む」と指で弦を指板のほうへ斜めに押し込む形になります。この力の加え方であれば、弦から指を離すときは、弦を引っ掻いてはじく動きとなり、音の変化にメリハリがつきます。「指板へ弦を押し付ける」ことは実は音高作りには適していないのです。
身体からの力の伝達
人間の身体は先端へ向かうにつれて細くなり、筋肉も繊細で小さな力で作業をするようになっています。楽器に力を加えるとき、これらに大きな仕事をさせることは無理があり、さらに楽器に直接力が加わるので、楽器が響くことを止める方向に働きます。
より身体の中心並びに下部にある筋肉を使うことができれば、それらは太く、大きな力を出すことができるので、ちょっと力を入れれば楽器を鳴らすことに十分なパワーを得ることができます。
とすれば、それを身体の先端までどう伝えるかということになります。これには、いろいろ複雑な要素がありますので、ここでは伝えられません。しかし、上記の概念を踏まえていろいろ試みてみれば、徐々に身体の使い方が判ると思います。
ひとつヒントとしては、肩甲骨の位置をコントロールすることをおすすめします、水泳のクロールの動きで腕を前方に伸ばしたときの肩甲骨の位置を演奏に応用してみてください。

小室 昌広
管弦打楽器学科 講師
Profile
1967年千葉県出身。13歳よりコントラバスを始める。東京芸術大学並びに同大学院を経て、藝大フィルハーモニアに所属。コントラバスを加藤正幸、永島義男に師事。F.ペトラッキ、L.シュトライヒャーの各氏に指導を受ける。演奏家としてだけでなく、指揮や作曲も行い、その作品は東京交響楽団等によって演奏されている。古楽器演奏にも携わっており、リベラ・クラシカ等の古楽アンサンブルにも参加。
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