
フルートの基礎とそれを生かした練習
フルートは空気の抵抗をとても多く受ける楽器です。演奏者が頑張って息を出せば出すほど空気の抵抗も強くなって音が出にくくなります。
口を閉めてたくさんの息を出してやっと高音が出せたかと思えば、軽く吹いただけなのにスッと鳴った、なんて経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
大切なのは、力まかせに吹くことではなく、ちょうどよい楽器の当て方、息の当て方を見つけることです。
良い音を出す環境づくり
最初に楽器で良い音を出す環境づくりをします。アンブシュアというやつですね。
とはいえアンブシュアの正解はだれにもわかりません。口の形、唇の厚さ、歯並びなどみんな違います。時間をかけてより良い形やポイントを各自が見つけていく必要があります。
とはいえ「自分で探してね」と丸投げでは困ってしまうので、次の3つの要素をヒントに探してみてください。
- 口の穴の大きさ(アパチュア)と上下唇どちらに息を当てているか
- 下唇で歌口の穴をどの程度覆うか
- 上唇と歌口の向こう側(エッジ)の距離
これらは互いに影響し合いながらもそれぞれメインの役割を持っています。
1.は息の方向やスピード
2.は息の角度と振動媒体までの距離
3.は息の圧力と音程のコントロール
※特に2.と3.は連動しやすいので注意が必要
これらのバランスを見つけて自分の音を出す環境を構築し、更にそこから良い音を探っていくことになります。
ここで大切になるのが「ロングトーン」です。フルートをやっている方なら必ず先生に「やりなさい!」と言われる基礎練習ですね。色々なロングトーンのやり方がありますがどれでも構いません。「どの本をやるか」より「どうやるか」の方が大事です。
ロングトーンで気を付けることはたくさんあります。むしろ演奏で必要な要素は全て気を付ける事が理想になります。
とはいえいきなり全てを気を付けて吹くのは無理なので、まずは息の持続力を訓練するためにブレスのタイミングに気を付けてみることをおすすめします。
例えば四分音符=60でメトロノームを付けていたとします。音を出すちょうど2拍前から準備をし、1拍前から息を吸います。息を出す前には必ず息を吸っています。この吸っている息の影響を受けないわけはありません。息が体の中に入って出てくる回転を感じてみましょう。慌てると自分の吸っている息が邪魔になってまっすぐな息が出ていきません。
ロングトーンは長く音を伸ばすので息の持続力が必要になります。息の持続力を発揮させるためには、その反対の力「瞬発力」を極力使わない事が大事です。楽器を持たずにものすごく速い息を吸って瞬時に歌声を出して伸ばしてみてください。途中で息が震えて呻き声のようになってしまうと思います。瞬発力によって持続力が発揮できていない状態です。歌を歌うのでも楽器を演奏するのでも呻き声より歌声で演奏した方がいいですね。
ここで「力を抜く」ことが大事になります。これも歌を歌う、声を出す時の体の力の入り方を観察してみてください。息を出す時にはそんなに大きな力はかからないはずです。
応用
次は応用の話をしたいと思います。
基礎練習なので応用ができます。むしろ応用できないならそれは基礎とはなりません。
ロングトーンの次の練習に「音階」があります。音階は指の練習と思われがちですが、ロングトーンの応用の第一歩でもあります。
最初の準備は先ほどと同じです。発音は最初の音だけを狙うのではなく音階の全体を一息で覆うように。途中でブレスを吸う事になると思いますが、そのブレスの前の音を伸ばしてロングトーンの時の音になっているかを確認します。
連続している細かい音符や速いパッセージを吹ける息と吹けない息があります。技巧的な曲を演奏できる人は感覚でこれを習得している事になります。音階の途中でもロングトーンの環境を崩さず吹けているかの良いチェックになります。
とある音階練習を今の方法でアレンジした物の譜例を載せます。参考にしてみてください。

最後に。
息の話ばかりしてしまいましたが、フルートのリードは息(空気)で作られます。他のリード楽器のようにリードを物理的に用意する必要はありませんが、リード自体は存在してそれが大きな影響を与えています。ブレスや体の状態を確認して空気の流れを感じてみてください。すぐには感じ取れないかもしれませんが数週間、数か月、数年やった頃にはかけがえのない基礎力になっているはずです。
どうか音を頑張って出す、間違えずに出すだけにならないよう、習得した基礎力を使って歌を歌う息で楽器を存分に歌わせて曲を歌い上げてみてください。

黒田 聰
管弦打楽器学科 講師
Profile
神奈川県出身。6歳からフルートを始める。2005年東京藝術大学音楽学部器楽科卒業後渡独、2007年ドイツ・シュトゥットガルト国立芸術大学卒業。第52回全日本学生音楽コンクール東京大会奨励賞受賞。第6回別府アルゲリッチ音楽祭にオーケストラメンバーとして参加。これまでにフルートを石橋正治、金昌国、中川昌三、ジャン=クロード・ジェラールの各氏に師事。現在はソロ、室内楽、オーケストラ等で活躍。Musica Essence、森の五重奏団フルート奏者。尚美ミュージックカレッジ専門学校、ムラマツレッスンセンター講師。
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