
サクソフォーンを演奏するにあたり、基本的な知識や技術をお伝えしたいと思います。
姿勢
立奏時
基本的には背筋を伸ばし、「休め」の姿勢(体をまっすぐにして電車などで揺れに耐えて踏ん張れる程度に足を開く)で立ちましょう。重心は足の指に掛かるようにすると安定します。
試しにつま先立ちを数秒しながら吹いて、そのまま降りてみてください。恐らくほとんどの方がこれで良い重心ポイントに来ると思います。
ただし、力の入れすぎには注意しましょう。力を抜いてスッと綺麗に立っている状態で吹くのが一番です。また、吹いているときに左肩が極端に上がってしまわないようにしましょう。
座奏時
背もたれにもたれず、入学式や卒業式のような式典の時の座り方をしましょう。立奏同様、重心が後ろにいってしまう方をしばしば拝見します。これでは力が入らず、息も吸いきれない、吐ききれない状態になってしまうのでか、お尻に腰を乗せることを意識してみてください(反り腰にならないように注意)。
また、足は揃えすぎず、かつ前に伸ばしすぎないのもポイントです。
楽器の角度はネックについている楽器メーカーのマークが自分の鼻の先のライン(センター)に来るようにするといいでしょう。
姿勢が崩れないように、ストラップの長さも調節してくださいね。

セッティング
良い音を出すためには自分に合った道具を使うのは必須項目です。中でもマウスピースとリードは一番音色を左右します。
吹奏楽では「エボナイト」という材質のモデルを使用するのが一般的です。
以下、それぞれの一般的なモデルをご紹介します。
マウスピース
- ソプラノ&アルト:セルマー社 S90シリーズ(170、180)、コンセプト
- テナー:セルマー社 S90シリーズ(170、180)、ヴァンドレン社 T20
- バリトン:セルマー社S80シリーズ、S90シリーズ、ヴァンドレン社 オプティマムシリーズ
リード
- ヴァンドレン社 トラディショナル、V12
- ダダリオ社 レゼルヴシリーズ
- レジェール シグネチャーシリーズ(樹脂)
特にバリトンサクソフォーンのマウスピース関しては、専門家でもそれぞれ合うモデルが違う印象です。
マウスピースに関しては、いずれの楽器にしても、学校に来てくださる講師の先生や専門家の方に相談したり、実際に楽器店で色々な個体を吹いてみて『選定』することをお勧めします。
そして、マウスピースにリードを合わせることが大切です。決して厚い(3 1/2など番手が上がる)から良い音が出るわけではありません。
アンブシュア
マウスピースをくわえたときの口の形を「アンブシュア」といいます。
- 下歯に下唇をかぶせ、その上にマウスピースを乗せます
- 上歯を直接マウスピースに乗せます
- 上唇をマウスピースに被せたら、「イ→ウ」の中間くらいのイメージで口の形を整えて閉じます
上の歯の位置は、アルト・サクソフォーンの場合はマウスピースの先端から1センチくらい、ソプラノなら0.8センチ前後、テナーとバリトンは1.3センチくらいを目安として、歯の形などに合わせて調整してみてください。

上の歯がマウスピースにあたる位置が深すぎると、音のコントロールが難しくなります。逆に浅すぎると、リードの振動を抑えてしまって、音が小さくこもってしまいます。
ここまでできたら、以下の項目をチェックしながら息を吹き込んでいきます。
- 上歯がしっかりマウスピースに固定されている
- 下唇の下のあごが伸びていること(うめぼしの種のような状態にならない)
- 上歯と下歯の位直をそろえる(マウスピースをくわえた時、上下の歯がほぼ垂直に揃う。通常より下歯を少し前に出した感じ)
- 頬は膨らませない
- 下唇や上唇と歯ぐきの間に空気がたまらないように
タンギング
タンギングは、リードに舌を当てて音を切ったり形を作る補助作業です。基本はリードの先端に舌の表面(点のイメージ)で触ります。
発音の種類として「トゥー」や「ター」「トー」など、タ行で習った方は多いと思います。
もちろん間違いではありませんが、これらの発音は飛沫が飛ぶようなはっきりした発音です。
コラールなどゆっくりな美しい曲ではこれらの発音は曲調にそぐわなくなってしまいますので「ラー」「ルー」「ロー」など、ラ行で発音してみてください。
舌の動かし方で言うと「ヨー」も試してみると良いと思います。
またリードを弾いて弦楽器のピチカートのようなスラップタンギングになってしまう人は、舌が柔らかくリードがめり込んでしまうからです。
舌は筋肉でできていますので、上腕などの筋肉を力を入れるように、下に少し力を入れて硬さを作ってみてください。ボクシングのジャブを打つようなイメージです。
基礎的なタンギングの練習方

- タンギングせずに息だけで音を出す
- リードに舌をあてて音を止める(この状態を少しキープ)
- リードから舌を “離して” 音を出す(決してリードを弾かない)
- 以後2~3を、舌の位置を確認しながらゆっくりくり返す
これでタンギングがどういうものかを体感し、舌の動きを訓練していきます。舌をリードに当てている時も息の圧力をかけておくことが大切です。
速いタンギングのための練習
例えば♩=116のテンポを16分音符で切るのが限界とします。ちょっと背伸びした♩=120で、16分音符2つ入れる練習をします。

これができたら16分音符3つ、続いて4つと増やしていきます。これで8〜16回(2〜4拍)できたらテンポを上げてみましょう。
日々の基礎練習に関して
基礎練習
それぞれに目的意識や目標を持つと、達成感を感じて率先して取り組めると思います。
ロングトーン
サクソフォーンの出せるすべての音域で行うことをお勧めします。

意識すること
- 音色
- 音量
- 音程(調性)
- 音型(アタック、リリース)
日替わりなどで良いので、様々な調性の音階を使ったり、音量を変えて行うと、より効果的です。

スケール
ロングトーン同様、サクソフォーンの出せるすべての音域で行うことをお勧めします。

まずはスラーで全ての音を滑らかに、同じ音量で音質を揃えるよう意識してみてください。
続いて、レガートのタンギング、スタッカートなど、アーティキュレーションのバリエーションを増やしていきましょう。
24調すべてできるようトライしてみてください(尚美ではもちろん、すべての音楽大学で必須となります)。
意識することはロングトーンと同じですが、きちんとメトロノームを使って無理のないテンポで正確にリズムを刻むように頑張りましょう。
また指が思うように動かない時は以下のようなリズム練習をしてみてください。

ビブラート
音に波をつけて、表情を出す表現方法です。サクソフォーンは弦楽器のように音程を上げ下げしてビブラートをかけます。顎というより、下唇とその周りの筋肉を動かす方が正しいかと思います。
まずは上下の唇を歯の間に挟んでガムを噛むようにもぐもぐしてみてください(唇の弾力を使います)。
このイメージを持ったら実際に音を出して、波をつけていきます。
練習方法

♩=72〜76
①最初は4分音符 ②続いて8分音符 ③3連符 ④最後に16分音符
で波を均等に作る基礎トレーニングをします。この基礎トレーニングがある程度できるようになったら、ゆったりとしたメロディの長めの音符からかけていってみてください。
その他
音程に関して
サクソフォーンは音程が完璧な楽器ではないため、きちんと音感を持って、頭の中で歌いながら、時には替え指を使って補正しながら演奏しなくてはなりません。
参考にアルトサクソフォーンの傾向と対策表を掲載します。
あくまで標準的なものですので、参考の一つとして捉えていただき、それぞれに合った運指を見つけてくださいね。
(音程が低ければキーを開け、音程が高ければキーを塞ぎます)。
音域による癖
まずは弦楽器やピアノを想像してみてください。もしくはご家庭や学校で現物があれば見てみてください。
どちらの楽器も音域が高くなるにつれて弦(=出る音)は細く短くなり、低くなるにつれて太く長くなります。これが自然の摂理です。それを理解した上で、各音域に対して以下のようのことを気をつけてみてください。
高音域
細くなったり、音程が高くなってしまう方は噛みすぎてしまっている可能性が高いです。ほんの少しだけリラックスして、アンブシュアが『イ』とならないよう、『ウ』などの形の寄せてみてください。息も少しだけ『ホー』としてみると改善できるところがあると思います。
中音域
特に真ん中の「ドシラソ」の辺りは音の抜けが悪く、かと言って吹き込み過ぎると詰まってしまいますし、音程も下がってしまいます。息を少しだけ『ホー』というイメージで出して、音量ではなく響きと伸びで表現しましょう。
低音域
サクソフォーンは真っ直ぐにすると、ネックとベルの口径の差が大きい円錐形をしています。この形状により大きな音が出ますが、逆にきちんとコントロールしないと低音域は荒れた音色になってしまいます。口を緩めないこと、音が開かないことなどに注意してみてください(もちろん閉め過ぎはNGです)。
人の声に対する声帯の開きは、高音が開いて、低音になると閉まっていきます。これと同じです。
音の質
例えば吹奏楽などですと、サクソフォーンは「音が汚い」「うるさい」「硬い」など注意されたことがある方が少なくないと思います。
音色や質感は正解が一つではありません。
場面によって柔らかい音が欲しい時、逆に硬い音が欲しい時など、様々な音色のバリエーションが必要です。
基本的には煌びやかであったり、響きが豊かであったり、伸びのある音を目指していきたいですが、
- 明暗
- 重軽
- 硬柔
- 寒暖
などたくさんのイメージを持つこと、そしてアンサンブルや合奏の場合はそれを共有することが大切です。

山浦 雅也
管弦打楽器学科 講師
Profile
福島県出身。東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現・尚美ミュージックカレッジ専門学校)管弦打楽器学科、芸術表現アカデミー学科を共に首席で卒業。卒業演奏会出演。ヤマハ新人演奏会出演。その後同校演奏室員として更なる研鑽を積む。サクソフォーン四重奏団 Quatuor B、Saxofox、Circle A Sax 各メンバー。尚美ミュージックカレッジ専門学校、ドルチェミュージックアカデミー、スガナミ楽器 各講師。(財)地域創造 公共ホール音楽活性化事業支援アーティスト。板橋区演奏家協会理事。サクソフォンアンサンブル響雅音(こがね)主宰。セルマーアーティスト。サクソフォーンを新井 靖志氏、室内楽を中村 均一氏に師事。
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