2003.01.01
ミュージカル学科
小林:最近の若い子たちは、メンタルも昔に比べて弱くなったように感じます。打たれ弱いというか・・・。
祖父江:打ってもいないのにね(笑)
でも厳しい環境って社会にでれば、すごく日常的にあるものだと思うし、経験として必要なことだと思うんです。
僕も業界の裏側もどこでも知ってるわけじゃないけど、ミュージカル俳優だって、テーマパークダンサーだって舞台上はすごく明るくて楽しくて・・・って見えるけど、先輩・後輩のちゃんとした“しきたり”を教えることを厳しいし辛いって感じてしまうことってあると思うんですよ。入ったばっかりの時なんて特にね。でも先輩だってみんなそこを経験して成長していく。
ギリギリの力でやっと受かった人たちは、特に余裕がないから自分ではそんな風に思ってないようなことでも、注意されたりとかね。それを不条理に思ってしまう状況ってあると思うから、早い段階で自分に傷口を作ることで、メンタル面でも成長していけるといいですよね。
小林:そうですね。
特にこの業界は、メンタルが弱いとやっていけない世界。だからこそ体調管理と同じくらいメンタル強化っていうのは大切ですよね。
祖父江さんが思う成功するのに必要なポイントを教えて下さい!
祖父江:うーん。そうですね。
まずは、これはあくまでも僕の場合だけど。
小林:はい。
祖父江:”劣等感をもつこと”と”自分を心配すること”と”自信を持つこと”ですかね?
小林:劣等感ですか。
祖父江:そう、まずは劣等感。
僕は、すごく体が硬くて、劇団四季入ったときもまだ硬くて、入ってからやわらかくなった。むりやり色々やったんですけどね。今僕は結婚していますけど、その頃は「たぶん劇団四季の人で僕と結婚してくれる人はいない」と思ってましたから(笑)それくらい男として恥ずかしい人だった。
だってみんなが普通にできることができないんですよ?とにかく足上げるのも、回るのも無我夢中。
劇団四季だと研究生は13時に終わっちゃうけど、後の4時間は絶対に遊びに行かないで17時まで柔軟やって、シャワーで関節温めてもう1回柔軟してみようとかそんなことばっかりやってました。
でも、じゃあそれはバカなことだったか?っていうとそうではなくて、3年程経った頃にはきちんと目に見える結果につながったんですよね。
だから劣等感を持って努力するっていうのがひとつ。
小林:なるほど。
祖父江:あとは、自分がマイナスの方向に力が落ちていっていないか?そこをしっかり心配すること。劣等感を持つということもそうだけど、しっかりと自分を客観視するということが大切。
その2つができてくると今度またそれに付随して自信をもつということですよね。
小林:うんうん。
祖父江:僕の場合スタートが遅かったんです。19歳からなんですよ、踊り始めたのが。
で、劇団四季に入って24歳でCATSに出ることができました。
でも今は、もうちょっと早い段階で始めてると思うんですよね?
小林:そうですね。小さい頃からなにかダンスをしていた学生もいますし、もちろん未経験で入学してくる学生も実は結構多かったりします。
祖父江:今みたいに、僕が若かったころにはそんな大きなテーマパークもなかったし、学校だってそんなになかったから、今の若い人は本当に環境の面で恵まれてると思いますよね。
小林:うん。そうですよね。
確かに僕が学生の頃に東京ディズニーランドができたから、そこからですもんね。
祖父江:そうそう。
テーマパークダンサーは本当に大変。夏なんて熱中症になりかけるし、6月くらいには女の子だって髪の分け目まで真っ黒ですしね。
本当に苦しいし、ミュージカルもそうだけど「ダメだ。今日ダメだ~。」って思っても笑顔で行かないといけないお仕事でしょ?
なんにしても仕事って大変。でもその中でも、この仕事は体やメンタルがどんな状況でも代わってくれる人はいないから無理してでもやらなきゃダメ。やっぱり大変な仕事ですよね。
でも普通の仕事よりも大変だけど、喜びは何十倍も大きいっていうのもありますよ。
小林:そうですね。日々の生活でどこか怪我しても影響がでるし、とにかく体調管理がすごく大事だし、常に気を抜けない。でも本当に大変だけど、お客さんの笑顔とかがパワーになる。幸せを届ける仕事なんだけどこっちが元気をもらえるというか・・・すごくステキな仕事ですよね。
それでは最後に、M&SカンパニーとSHOBI 。今後はどういった形になっていくのが理想なんでしょうね?
祖父江:今日(7/4)はプロダクション所属オーディションを行いましたよね。
だから、これからは「ちょっと今の学生の経過を見てみて」とか、定期的にやプロダクションの人間がSHOBI の学生の成長をみることができるといいと思っています。ワークショップとかもそうですしね。
とにかく学生がこれからどんどん伸びていくようにできる限りのバックアップをしたいと思っていますよ。
これからSHOBI で、どんどんレベルも上がっていって学生同士が激しい競争ができるような環境になるといいですよね。
小林:SHOBI では、ミュージカル学科とダンス学科って基本的には授業やレッスンはもちろん別々だから、今回みたいに合同でなにかをするっていうのは学生たちも、すごくいい刺激になったんじゃないかと思いますね。
祖父江:「夢は海外の舞台に立つこと!」っていう人でも、いきなり今行ったら受からない。そうなると次に国内の劇団を目指しますよね。でも、そこからももれちゃう人っていると思うんですよ。
で、例えば「ミュージカルの舞台に立ちたい!」って夢を強くもってる人の中には「テーマパークダンサーかぁ」って思う人もいるかもしれないけど、まず“人の前に立つ仕事を経験してみる”というのは大切ですよね。
小林:僕も今ピューロランドに関わってることもあるけど、どこのテーマパークとか限定しないでやっぱり人前に立つ仕事をして、それでお金をもらって。それを経験した上で・・・っていう。やっぱりそれで納得して卒業後にテーマパークで仕事してる学生もいますしね。
祖父江:そうそう。
小林: もちろん卒業してから1年アルバイトしながらレッスンだけ受けて「先生、劇団四季受けます。がんばります。」っていう学生もいるし、もちろん僕も「それじゃあがんばってみなよ!」って言いますけどね。最終的には本人が決めることだと思うし。でもやっぱり、人前に立って恥かかないと。
祖父江:そう。
やっぱり脂汗流した方がいいんですよ。絶対にね。
だから経験を積みながらレッスンするっていう形がベストだと思いますよ。
レッスンだけだと、なんかやっぱり中だるみしますし。
現場経験すれば、絶対に自分よりできる人に出会えるし、現場の空気感がわかる、それってとても大きな収穫だと思うんですよね。
まずは現場の厳しさに一度は浸ってみる。そこからみんな成長していくんですよね。
小林:そうですね。でも、まずはスタートラインに立たないと。
うちのミュージカル学科やダンス学科のように専門的に教えてもらえる所で、まずはしっかりとした基礎と応用力をつけて、夢を叶えていって欲しいですね。
今日は本当にありがとうございました。